さまざまな項目について第1位と最下位の国を知ることは、それぞれの項目についての「物差し」をつくることになり、国際情勢を客観的に理解することにつながります。

世界には実に多様な国々が存在します。これらの国々がつくりだす現代の国際情勢を理解するために眞淳平著『世界の国 1位と最下位』(岩波ジュニア新書)が役立ちます。

本書は、以下の9項目について、その第1位と最下位の国を紹介しながら、こうした状況がうまれた歴史的背景や現状、問題点や課題などついて解説しています。通常とはちがった観点から世界情勢をとらえなおすことができ、興味ぶかいです。




1. 国土面積
  • 最大:ロシア 約1710万平方km、南米大陸全体の面積よりも若干ちいさい。
  • 最小:バチカン市国 約0.44平方km。

2. 人口
  • 最大:中国 約13億3741万人(2008年)。
  • 最小:バチカン市国 791人(2008年)。

3. GDP(国内総生産)
  • 最大:アメリカ 13兆7514億ドル(2007年)
  • 最小:ツバルとナウル(中部太平洋に位置する) どちらの国も GNI:約3000万ドル(2008年)。GNI(国民総所得)とは、GDP に、海外の労働者からの送金などをくわえた経済指標で、発展途上国などにおける経済規模をしめすためにつかわれます。

4. 国民負担率(税金に、社会保障の負担分をたした割合)
  • 最大:レソト(アフリカ南部に位置する国)、51.5%(2007年)。
  • 最低:アラブ首長国連邦、ほとんどなし。モナコ・サンマリノ・アンドラ・リヒテンシュタイン:ほとんどなし。

5. 軍事力
  • 最大:アメリカ 6650億ドル(2009年)
  • 最低:コスタリカ・パナマ・アイスランド・リヒテンシュタイン:なし。

6. 石油産出量
  • 最大:ロシア 約5億6600万キロリットル。
  • 最低:石油を産出しない国々多数。

7. 貧困
 ひとりあたりGDP
  • 最大:ルクセンブルク 10万3042ドル。
  • 最低:ブルンジ(アフリカの国) 115ドル(2007年)。

 貧困率
  • 最大:タンザニア 1日2ドル未満でくらしている人々の割合 96.6%(国民のほとんどが貧困層)。
  • 最低:スウェーデン・デンマーク 相対的貧困率 5.3%(貧困層は20人に1人)。

8. 穀物自給率
  • 最大:オーストラリア 333%。
  • 最低:つぎの国々はゼロ。サモア独立国・セイシェル・セントルシア・セントクリストファー・ネイビス・オランダ領アンティル・キリバス・アイスランド・フランス領ポリネシア・バーミューダ諸島・アラブ首長国連邦・ジブチ・モルディブ・モーリシャス・ジャマイカ・バルバドス・ブルネイ。

9. 進学率
  • 最大:キューバ、高等教育への粗進学率 109%(進学年齢の人口よりも多い人数が大学などに進学している)。
  • 最低:リベリア、初等教育への純進学率 31%(進学年齢の人数全体にしめるその年齢の進学者数の割合)、粗進学率 83%(進学年齢では進学できなかったが上の年齢になってから進学した人数もふくむ)。



本書をよめば、上記の9項目についての最高と最低の国々をおさえることができ、9項目それぞれについての「物差し」(判断基準あるいは評価基準)をもつことができます。そのた多数の国々は、最高と最低の間に定量的に位置づけて理解することができます。

最高と最低を知るということは両極端を知るということであり、両極端を知ると情報の整理が一気にすすみます。

そもそも、大きいとか小さいとか、高いとか低いとか、強いとか弱いとかいうことは絶対的にきまることではなく相対的にきまることです。「物差し」をもっていれば、大きいとか小さいとかを確実にきめることができます。「物差し」をもって定量的に判断や評価ができれば、おもいこみや偏見から脱却して客観的に物事をみたり、視野をひろげることもできます。

眞淳平著『世界の国 1位と最下位』は、このような最高と最低から出発して、それぞれの項目の推移を歴史的・物語的に展開するという斬新なアプローチをとっていて大変おもしろいです。ただしく客観的に世界を認識するために是非とも読んでおきたい一冊です。


▼ 引用文献
眞淳平著『世界の国 1位と最下位 国際情勢の基礎を知ろう』(岩波ジュニア新書)岩波書店、2010年9月17日

▼ 関連記事
両極端を知ってから評価する - イヤホンの試聴 -
極端を知って全体をとらえる - 本多勝一著『極限の民族』(3)-
情報技術の最先端を知って全体像をとらえる - Apple Watch 予約受付開始 -

▼ 追記1
貧困率に関連して、日本では近年、貧困率が急激に高くなっていることがわかります。

▼ 追記2
最高と最低を知って物差しをもつと、世界標準というものも相対的なものであり、それがどのようにして生じてくのかについても理解しやすくなります。あるいは世界標準をどのようにつくったらよいかのヒントがえられます。