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上野の森美術館(平行法で立体視ができます)

ブータン王国は、GNH(国民総幸福)という先進国にはない別の尺度をもっています。あらたな尺度をもつことはとても大切な事です。

東京、上野の森美術館で「ブータン ~しあわせに生きるためのヒント~」という一風かわった企画展が開催されています(注1)。

会場の一部では写真撮影が許可されていました。写真はいずれも平行法で立体視ができます
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >>


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ブータンの民族衣装

ブータン王国は、ヒマラヤ山脈の南麓にある小国であり、国土の大半が山と谷、亜熱帯のジャングルから氷河地帯まで、ゆたかな自然にめぐまれた国です。ほとんどの国民が仏教を信仰し、いたるところに僧院や寺院、仏塔がみられます。


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アツァラの面
物事の本質に気づかせる意味があります。


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グル・ツェンギェー・チャムの面
ヒマラヤに仏教をひろめたグル・リンポチェの8つの姿をあらわします。


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「ゆっくり歩けば、ロバでもラサまでいける」
ラサはチベットの首都です。いそいで行く必要はありません。


ブータン王国は、第4代国王が1972年に提唱した「GNH」(グロス・ナショナル・ハピネス=国民総幸福)によりひろく知られるようになりました。これは、GNP や GDP だけを追求するのではなく、経済力はなくても国民がしあわせにくらせる国をめざすということです。国の伝統文化をまもり、自然環境と調和したくらしをつづけ、無理な開発は決しておこないません。近代化はゆっくりすすめればよいのです。

ブータン王国と対照的なのが日本をはじめとするいわゆる先進国です。近代化の名のもとに、どこまでも進歩をおいものとめ、開発につぐ開発、高速化と効率化。何でもはやくやればいいとおもって、ますますいそがしくなっていきます。そしてかならずしも幸福になったと感じられません。




展示の方は、ほかの企画展などとくらべて、入場料が 1400円 もした割りには展示品がすくなく、解説もあまりなく、あっという間に見おわってしまいました。入場料は 900円 程度がよいとおもいました。

しかしながらこのように費用対効果をすぐにかんがえ、展示量と見学時間から効率を計算し、よそと比較したり評価したりすることにわたしたち現代文明人はなれすぎてしまっています。先進国の常識と尺度でははかることができないことが実はあるのだということに気がついた方がよいということでしょう。

わたしはブータンには行ったことはありませんが、となりのネパールにはかつて住んでいたことがあり、そのときにフィールドワークで電気もない山奥に何回も出かけました。そこでは、自給自足の生活をしながら誰もがしあわせにくらしていました。その人たちは決して不幸な人々ではありませんでした。




「しあわせに生きるためのヒント」。今回の企画展は視点がよかったとおもいます。一旦たちどまってかんがえなおしてみることをわたしたちにおしえてくれます。


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上野の森美術館 展示室


▼ 注1
ブータン ~しあわせに生きるためのヒント~
会場:上野の森美術館
会期:2016年7月18日まで
その後、愛媛県美術館、岩手県民会館、山梨県立博物館、兵庫県立美術館ギャラリー棟、広島県立美術館に巡回します。