古代オリエント博物館入口(交差法で立体視ができます)
実物をみたら、それを想起しイメージし、情報を圧縮して文字を書きだすようにします。
東京・池袋にある古代オリエント博物館で特別展「世界の文字の物語 -ユーラシア文字のかたち-」が開催されていました(注1)。文明とともに進化をとげた文字5千年の歴史を展示物を見ながらふりかえることができました。
文字は人間がつくりだしたもののなかで特に重要なものであり、ほかのものとは比較にならないほどわたしたちの社会に大きな影響をあたえてきました。
言葉は最初は音声でしかあらわせませんでした。しかし文字が発明されたことによって記録ができるようになりました。形をもたなかった言葉は文字によって具象化されました。こうして直接対面しなくても非常に多数の人々に膨大な情報を伝達することが可能になりました。
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世界中で現在つかわれている多様な文字の歴史をひもといてみると、そのルーツはわずか数種しかありません。世界最古の文字は、約5千年前に文明誕生と同時につくられた単純な絵文字でした。
もっともふるい文字のひとつであるヒエログリフ(聖刻文字)は、古代エジプトで紀元前3千年ごろに発達した象形文字です。ヒエログリフは、エジプトの森羅万象の形をかたどることによってつくられました。
このヒエログリフはその後、東地中海世界を左回りにめぐって伝播していき、原シナイ文字と原カンナ文字が生みだされました。そして原シナイ文字と原カンナ文字から南アラビア文字やフェニキア文字が生みだされました。
その後ギリシア人たちはフェニキア文字を発展させてギリシア文字をつくりました。ここにいたって単子音文字と単母音文字をもつアルファベット(音素文字)が誕生したのです。そしてギリシア文字の系統からラテン文字(ローマ字)がつくられました。
このように世界中で今日つかわているローマ字はエジプトのヒエログリフに由来しているのです。
その後ギリシア人たちはフェニキア文字を発展させてギリシア文字をつくりました。ここにいたって単子音文字と単母音文字をもつアルファベット(音素文字)が誕生したのです。そしてギリシア文字の系統からラテン文字(ローマ字)がつくられました。
このように世界中で今日つかわているローマ字はエジプトのヒエログリフに由来しているのです。
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一方 東洋では別の歴史がありました。中国では漢字が発達しました。最古の漢字は甲骨文字とよばれています。前1400〜前1050年ごろの出土物に亀甲と牛骨にきざまれた文字がり、この材質から甲骨文字とよばれます。甲骨文字は、後代の漢字に比べると象形性がとてもつよく絵画的な文字でした。
甲骨文字からはじまった漢字は、表意的な特性をたもったまま現在まで継続的につかわれています。
日本には、弥生時代に漢字が伝来していますが、弥生人が漢字を理解していたかどうかは不明です。そのご日本人は漢字から、仮借による「仮名」をへて、カタカナとひらがらなという独自の表音文字を生みだしました。
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以上のように文字の歴史をふりかえってみると、絵文字・象形文字・漢字などの表意文字からはじまって、そのご表音文字が発明されたことがわかります。先にイメージがあって、そこから文字を生みだしたという流れに注目することが重要です。
文字は、物や形をシンボル化することによって生みだされました。シンボル化により情報は圧縮されます。文字とはシンボル化された記号です。
このような歴史的な流れを現代の情報処理の観点からとらえなおすと、実物をまず見て(インプット)、つぎにイメージし情報を圧縮します(プロセシング)。そして文字にして書きだします(アウトプット)。
イメージして書きだすという過程は文字の歴史からみてもとても自然なやり方で理にかなっています(図1)。

図1 イメージして文字を書きだす
森羅万象は、人間のイメージング(情報処理)によって文字(言語)に変換されていくのです。文字の歴史と情報処理の過程との対応関係を理解することはとても重要なことだとおもいます。
▼ 注1
特別展「世界の文字の物語 -ユーラシア文字のかたち-」
▼ まとめ記事
特別展「世界の文字の物語」 -まとめ&リンク -