情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジしてくことは生命進化論的にみて自然なやり方です。
特別展「生命大躍進」(注1)は、生命の進化と大躍進について体験的にまなぶことができるおもしろい企画展です。
生命進化の歴史には大躍進(飛躍)が何回かありました。海の中で誕生した生命(生物)は、海から陸へ、陸から空へ、宇宙へと進出し、空白領域をうめるように大躍進をしてきました。生命は段階的に発展しており、ポテンシャルを高める時期と、比較的短時間で大きく躍進する時期のことなる2つの時期があることに気がつきます。
約5億年前のカンブリア時代に生命は眼を獲得しました。これにより環境(外界)を認知する能力が飛躍的に向上しました。約4億年前には両生類が出現して海から陸へ進出しました。 約2億年前には哺乳類が出現しました。 約700万年前には人類が出現しました。
人類の一種であるわたしたちヒト(ホモ・サピエンス)は眼をつかいこなして情報をインプットし、手をつかいこなしてメッセージをアウトプットします。これは進化論的にみて非常に高度な能力です。
*
けっきょく生命とは〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムであり、進化とはこのシステムを高度化する歴史でした。同時に生命は、空白領域に進出しながら発展する存在でもありました。
わたしたち現代のヒト(ホモ・サピエンス)は、過去の生命にくらべてはるかに高度な〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をおこなうことができます。とくに情報の〈インプット→プロセシング→アウトプット〉、つまり情報処理をおこなうことができます。
この情報処理能力をさらにみがき、そして空白領域にチャレンジしていくことは進化論的にみて自然なやり方であり重要なことだといえるでしょう。
▼ 注1
特別展「生命大躍進」
▼ 記事リンク
進化における生命の大躍進をみる - 特別展「生命大躍進」(1)-
生命進化の物語がはじまる - 特別展「生命大躍進」(2)-
眼をつかって情報をとりこむ - 特別展「生命大躍進」(3)-
空白領域に進出する - 特別展「生命大躍進」(4)-
眼と手をつかいこなす - 特別展「生命大躍進」(5)-
段階的に発展する - 特別展「生命大躍進」(6)-
眼をつかいこなして多種多量な情報をうけとる - 特別展「生命大躍進」(7)-
眼でみて認知し、行動して確認する - 特別展「生命大躍進」(8)-
手をつかいこなしてアウトプットする - 特別展「生命大躍進」(9)-
人間の〈インプット→プロセシング→アウトプット〉を理解する
南極点をめざした「地上最大のレース」 - 本多勝一著『アムンセンとスコット』-
地球の一体性を認識する -『アポロ月面着陸 ダイジェスト写真集』(ブックブライト)-
▼ 追記
今回の特別展は、ヒトにいたる生物進化の過程を化石で概観し、大躍進(飛躍的な変化)がおこったときにゲノムに何がおきたのかを解説するという、これまでの進化の展覧会とはちがった内容になっています。
ゲノムとは、DNA という分子を文字とする生物の書物のようなものといえます。あらゆる生物は、おのおのの書物に書きこまれた遺伝情報をもとにしてそれぞれの体をつくり、生命活動をいとなんでいます。最近の研究により、ゲノムのなかにどのようにして生物の体をつくる機構が書きこまれているかがわかってきました。しかもその DNA の配列をことなる生物で比較することで、進化の道筋や生物があらたな機能を獲得したときに何がおこったのかも推測できるようになってきています。
このような解説は、ランダムに生物におこった変化が自然選択による淘汰をうけて進化はすすむという、つまり環境の変化に適応する側面を強調するダーウィン流の解釈とはことなる点に注意してください。
▼ 参考文献
『特別展 生命大躍進 脊椎動物のたどった道』(図録)小野雅弘編集、2015年、NHK・NHKプロモーション発行
『NHKスペシャル 生命大躍進』2015年7月10日、NHK出版