
図1 段階的に発展する
生命は段階的に発展していきます。ポテンシャルを高める時期と、比較的短時間で大きく躍進する時期の2つの時期があることに気がつくことが大切です。
特別展「生命大躍進」(注1)は、生命の発展には何回かの大躍進があったことをおしえています。おもな大躍進はつぎのとおりです。
5億4100年前:カンブリア大爆発(眼を獲得)約4億年前:海から陸へ約2億年前:哺乳類の誕生約700万年前:人類の誕生

図2 年表:脊椎動物がたどった道(注2)
大躍進とは、比較的短期間で大きな躍進(発展や変化)がおこることです。生命の進化は、だらだらとつづく坂を少しずつ少しずつのぼっていくような発展の仕方ではなくて、階段をのぼっていくようにガクンガクンと段階的に発展していることがわかります(図1)。
図1において赤線の部分が大躍進をしめしています。横軸は時間、縦軸は発展をあらわします。カンブリア大爆発、海から陸へ、哺乳類の誕生などいずれもこのような大躍進でした。
このように大きな発展は、比較的短期間(短時間)で一気におこるというところに生命の本質のひとつをよみとることができます。
それでは、図1で青線でしめした部分、ガクンと発展する前の期間は何もやっていないのでしょうか。そうではありません。そこでは、つぎの発展にそなえてポテンシャルを高めることをしているのです。
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このような生命の躍進(発展)の本質についての理解は、勉強をしたり能力を開発したりするときにも参考にすることができます。
たとえば外国語の習得を例にだしてみると、単語を地道におぼえたり、ヒアリングやスピーキングの練習をしばらくつづけているのに成果がさっぱりあがらないと感じることがあります。
しかしあるときパッと、現地人が言っていることが聞きとれるようになったり、うまく話せるようになったり、コミュニケーションができたりします。
この例では、単語を記憶したり会話の練習をくりかえしていた期間はポテンシャルを高める時期だったのです。ポテンシャルが高まったからこそ、その後の発展があったのです。ポテンシャルを高める方法としては記憶法がつかえます。
あるいは発電をするためには一定量の水をダムにためなければなりません。一定量の水がたまれば(ポテンシャルが高まれば)おのずと発電はできます。
ポテンシャルが高まっていき、ある高さ(限界)までいくと、エネルギーが一気に解放されるといったイメージです。
▼ 注1
特別展「生命大躍進」
岡山シティミュージアム( 2016年7月15日~ 9月4日)
▼ 注2(出典)
『特別展 生命大躍進 脊椎動物のたどった道』(図録)小野雅弘編集、2015年、NHK・NHKプロモーション発行
※ 生命進化の年表(系統図)をみれば生物多様性が生じてきた歴史を知ることができます。しかし進化と多様性は、情報量が非常に多くて複雑かつ専門的でわかりにくいと感じます。そこでまずは、年表(系統図)における階段状になったところ、ガクンとなっているところに注目するようにします。図2をみると、ガクンとなっているところは10カ所しかありません。ここを理解すれば進化と多様性の基本はおさえられたということになります。
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