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写真1 ダーウィニウス・マシラエ(霊長類の化石、4700万年前)
「イーダ」の愛称で知られます。霊長類化石としてもっとも完全な標本のひとつです。
 
眼をつかいこなして情報をインプットし、手をつかいこなしてメッセージをアウトプットします。これは進化論的にみてもっとも自然なやり方です。

特別展「生命大躍進」(注1)は、わたしたちヒト(ホモ・サピエンス)がどのように進化してきたかをおしえてくれます。

写真はいずれも交差法で立体視ができます。大阪市立自然史博物館で撮影しました。
立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 -  >>

わたしたちヒトの祖先である最初の霊長類は8500万年前ごろ(中生代白亜紀)に出現したとかんがえられています。

霊長類の大きな特徴は、左右の眼が前方をむいていたことと手足が発達していたことでした。前方をむいた左右の眼が左右の視野のかさなりと左右の視差の検出を可能にし、立体視ができるようになりました。このような高度な視覚能力と発達した手足とが、樹上という立体空間(3次元空間)での生活を可能にしました。これらのすぐれた能力は現代のわたしたちヒトにまでひきつがれています。




約700万年前、霊長類のなかから、樹上からおりて二足歩行を地上ではじめるものがあらわれました。人類の誕生です。


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写真2 サヘラントロプス・チャデンシス(初期人類の頭骨、700万年前)
現在しられる人類化石のなかでもっともふるい年代が推定されています。



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写真3 ネアンデルタール人(復元模型)
ネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は、約20万〜3万年前までのあいだ、ヨーロッパから中東、シベリアの西部地域に住んでいました。彼らは、わたしたちヒト(ホモ・サピエンス)の共通祖先と80万年ほど前にわかれた親戚であることが判明しています。ホモ・サピエンスとネアンデルタール人とは一部が混血し、わたしたちヒトにもネアンデルタール人のDNAがわずかにうけつがれています。



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写真4 ホモ・サピエンス(縄文人、5000年前)
岩手県大船渡市に位置する縄文晩期の遺跡で発見された縄文人の成人の頭骨です。縄文人は、日本人の基層集団であるとかんがえられています。




ヒト(ホモ・サピエンス)は約20万年前ごろにアフリカで誕生し、6万年前ごろにユーラシアへひろがっていったと想像されています。クロマニョン人や日本の縄文人もホモ・サピエンスです。アジア人もヨーロッパ人もアフリカ人も、肌の色や顔立ちはちがっていますがすべてがおなじホモ・サピエンスです。

ヒトの特徴は、大きく発達した脳をもっていることでした。そのため石器文化を発展させることができました。また環境に存在するものをシンボリックな絵や模様でえがいてのこしたり、言葉で表現することができました。こうして空間や時間をこえてメッセージをひろく他人につたえることができました。さらに記号や言葉をくみあわせてあたらしい表現を無数にうみだしていきました。つまりヒトは創造的だったのです。




現代の情報処理の用語をつかうならば、ヒトは、脳という高性能なプロセッサーをもっていたのであり、高度な情報処理をすすめることが可能な存在でした。

しかしわたしはここで、ヒトの眼と手に注目したいとおもいます。

情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をすすめるためにはプロセシングだけでなくインプットとアウトプットも必要です。インプットでもっとも大きな役割をはたしてきたのが眼であり、アウトプットでもっとも大きな役割をはたしてきたのが手です(図1)。ヒトは、高度に発達した眼(視覚)で大量の情報を3次元的にとらえることができます。また高度に発達した手で道具をつくり、絵をえがき、言葉を書くことができます。


160619 眼と手
図1 眼をつかってインプットし、手をつかってアウトプットする


つまり高度な情報処理のためには眼と脳と手の三拍子がバランスよくそろわなければなりません。このような意味で脳だけに注目するのは不十分です。能力開発の訓練をすすめるときにも十分に留意しなければならないことです(注2)。




およそ5億年前、生命大躍進「カンブリア大爆発」がおこり、わたしたち生物に眼が生じました。これにより情報のインプット能力が向上しました。8500万年前ごろになると立体視ができるようになりました。さらに手が発達し、高度なアウトプットができるようになりました。現代のわたしたちがもっている能力をこのように進化論的にふりかえることには大きな意義があります。能力開発の訓練においてどこに重点をおいたらよいか、参考になることが生命進化のなかから多々よみとれます。



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写真5 人類進化の展示を熱心にみる来館者たち



▼ 注1
特別展「生命大躍進」
※ 大阪展終了後は、岡山シティミュージアムに巡回します( 2016年7月15日~ 9月4日)。

▼ 注2
眼をつかったインプット訓練としてはステレオ写真を立体視する方法が有効です。手の訓練としては「指回し体操」というやり方もあります。
手と指は心とからだの「ハンドル」である 〜 栗田昌裕著『 指回し体操が頭と体に奇跡をよぶ』〜

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進化における生命の大躍進をみる -「生命大躍進」(1)-(2015年12月)
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眼をつかって情報をとりこむ -「生命大躍進」(3)-(2016年6月)
空白領域に進出する -「生命大躍進」(4)-(2016年6月)
眼と手をつかいこなす -「生命大躍進」(5)-(2016年6月)
段階的に発展する -「生命大躍進」(6)-(2016年6月)
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情報処理能力を高め、空白領域にチャレンジする -「生命大躍進」(まとめ&リンク)-(2016年8月)
人間の〈インプット→プロセシング→アウトプット〉を理解する

地球の一体性を認識する -『アポロ月面着陸 ダイジェスト写真集』(ブックブライト)-
南極点をめざした「地上最大のレース」 - 本多勝一著『アムンセンとスコット』-

▼ 参考図書


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