大観し大局をつかむ段階と、とくに好きな特定の分野に注目する段階を区別しふみしめることで、月刊誌を効果的に活用していくことができます。

グラフィックサイエンスマガジン『Newton』(2016年5月号)の「編集長室から」を読んで、編集長の水谷仁さんが退任されたことを知りました(注1)。水谷編集長からの最後のメッセージをここに引用しておきます。


私の写真が「編集長室から」にはじめて載ったのは、11年前の2005年の7月号でした。(中略)今回が最後の写真ですので、編集部の皆さんに集まってもらいました。2005年7月号をお持ちの方は、そのときの写真とくらべていただければ、私の髪の毛に白いものが多くなり、顔のしみもふえたことがわかると思います。ひと月ひと月の変化は大したものではないけれども、11年もたつとその変化は明らかです。(中略)11年、弊紙を読みつづけていただいていれば、きっとあなたの頭脳は11年前とは明らかにうちがう変化がおきているはず。(中略)きっと物を見る目がかわってきているはずです。(中略)積み重ねることの重さがそこにあります。


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まさにおっしゃるとおりであり、11年間も『Newton』を読みつづけていれば頭脳は向上し、物を見る目がつよまることはあきらかです。「継続は力なり」ということでしょう。




日本では、すぐれた月刊誌が多方面で発行されています。これを利用しない手はありません。月刊誌を継続して読みつづけるときには、月刊誌を大観し大局をとらえる段階と、もっとも自分が好きな特定の分野に注目する段階とを区別して意識するとよいです。

まずはすきな月刊誌ひとつを選択します。それを長期間にわたって見ていきます。

第1段階では、毎月、その月刊誌をかならず見るようにします。読むというよりは見るという感じで、細部にはとらわれずに大局をとらえるようにするとよいです。すべてを理解する必要はありません。大観するといってもよいです。あまり時間はかけません。

第2段階では、自分の興味のある特定の分野、特別すきな分野の記事をくわしく読みます。たとえば動物がすきな人は、動物に関する記事のみは徹底的に読むようにします。宇宙がすきな人は宇宙に関する記事はくまなく読むようにします。そしてほかの書籍類にも発展的にとりくんでいくようにします。第2段階は専門的にということです。

このような第1段階と第2段階の場面転換とつかいわけをすることによって月刊誌を効果的に活用していくことができます。

そして第3段階では何をやればよいか。第3段階では考察をします。たとえば卒論とかあるいはさらに上級コースにいく人には必要なことですが、まずは第1段階と第2段階でよいでしょう(図1)。

160605 月刊誌
図1 月刊誌を大観し、好きな特定の分野に注目する



ポイントは、本当にすきな月刊誌と分野を選択することにつきます。勉強であり趣味であり仕事であれ、すきなことは長期間にわたって継続していくことが可能です。どのような領域にせよ10年以上にもわたって継続をすれば、自分にとって大きな変化が生じることはまちがいありません。




わたしは創刊号以来の『Newton』の愛読者であり、今でも毎号をたのしみにしています。『Newton』は、複雑怪奇になりつつある自然科学をイラスト(イメージ)をつかってわかりやすく一般の人々につたえるとともに、わが国の自然科学の水準の高さをしめすものでもあります。

水谷仁さんは世界的な惑星科学者であり、2005年に、『Newton』の第2代編集長に就任されたことを知ったときには、これで、『Newton』の質の高さ、レベルの高さはたもたれるとおもいました。水谷さんは退任されましたが、あたらしい編集長のもとで、科学雑誌としてのレベルの高さを今後ともたもっていただきたいとおもいます。


▼ 引用文献
『Newton』(2016年5月号)、ニュートンプレス、2016年5月7日
Newton(ニュートン) 2016年 05 月号 [雑誌]

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