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「宇宙史」展示(平行法で立体視ができます)

宇宙史の視点、生命史の視点、人間史の視点のそれぞれの視点から地球をとらえると地球の見え方がちがってきます。
 
東京・上野にある国立科学博物館「地球館」の1階展示室入り口には「地球史ナビゲーター」があります。ここには、「宇宙史」「生命史」「人間史」の3つの展示があり、それぞれの視点から地球史をみることができます。

「宇宙史」展示では、約138億年前におきたビッグバンからはじまり、元素の合成、太陽系・地球の誕生から現在までの歴史のなかで地球をとらえることができます。

「生命史」展示では、約40億年前に地球の海のなかで生命が誕生してから、複雑化・多様化した生命の歴史を一望しながら地球をとらえなおすことができます。


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「生命史」展示(平行法で立体視ができます)



「人間史」展示では、約700万年前に人類が誕生してから、人類が進化し、ホモ・サピエンスが出現、文明をきずいて今日にいたった人間史(人類史)から地球をかんがえることができます。


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「人間史」展示(平行法で立体視ができます)


展示室の中央には「タイムラインステージ」があり、1億年単位の目盛りがその周囲についていて、また床のデザインがナビゲーターの年代にむすびついていて理解をたすけます。

これらからなる地球史ナビゲーターは、国立科学博物館「地球館」の展示全体のイントロダクションとして活用することができます。




地球史ナビゲーターでは、「タイムライン」(年表)を確認するのがポイントです。宇宙史・生命史・人間史ではタイムスケールがことなります。

  • 宇宙史:約138億年の歴史
  • 生命史:約40億年の歴史
  • 人間史:約700万年の歴史

たとえば宇宙史の視点から地球をみると地球は点のようです。しかし人間史の視点から地球をみると地球はかなり大きいです。このような視点のちがいからくる見え方のちがいを理解しておかないとおもわぬ誤解がおこります。

たとえばこんな例がありました。

ある研究者が生命史の視点から地球史の本を書きました。すると別の研究者がその人を批判して、「彼は、10年ぐらい研究して地球史の本を書いたけど、たとえば結晶の研究だけでも10年とか一生かかるのに、そんな短期間で、地球全体の研究ができるかよ。そんなバカな話あるかよ」といいました。

あるいは天文学者は「地球は点であるとか球である」といいます。しかし地形学者は「地球はでこぼこしている」といいます。

これらは、意見がくいちがっているようにおもわれることがありますがそもそも視点がちがうのです。スケールのとりかたがちがうのですからか見え方がちがって当然です。

タイムスケールや空間スケールを変化させる訓練ができていないためにおこる誤解やミスコミュニケーションが世の中にはいかに多いことか。小さいか大きいか、短いか長いか、細かいか粗いかは絶対的なものではなく相対的なものです。

今後、「地球館」のなかのそれぞれの展示を見ていくときにこのことがわかっていると理解がすすみやすくなります。




このようなかんがえ方を発展させると、生命史をまなぶことにより、いわゆる世界史(文科系の歴史学)から宇宙史までをもっと体系的にまなべる可能性もでてきます。

世界史と宇宙史、文科系と理科系とはかけはなれた分野であり相容れない、話が通じないとおもっている人がいるかもしれませんが、生命史という中間項をまなぶことによって、両者で対話ができる可能性は十分にあるのです。中間項として生命史をもってくることにより、体系的に全体を理解できる可能性はあるとおもいます。

すると生命史とはどのようなものでしょうか。「地球館」の展示をあらためて見ていきたいとおもいます。生命の仕組みと進化がキーワードになってくるでしょう。



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▼ 注
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