今回は、『発想法』(中公新書)第 III 章「発想をうながすKJ法」から、第2場面:「グループ編成」と「KJ法A型図解法」(73-94ページ)をとりあげて解説します。
本書から要点をピックアップします。
1.. グループ編成1-1. 紙片を読む紙片をすべて拡げ、読む。1-2. 紙片を集める親近感を覚える紙片を一カ所に集め、小チームをつくる。1-3. 表札をつけるあたらしい紙片に、各小チームの内容を圧縮して表現、記入し、それを小チームの上にのせる。1-4. チーム編成を繰り返す小チーム編成から中チーム、大チーム編成へとチーム編成を繰り返す。どのチームにも入らない「離れザル」を無理にどれかのグループにくっつけない。2. KJ法A型図解法2-1. 紙きれの束を拡げて、納得がゆくように配置する。2-2. 大チームから小チームに展開し、図解化する。
上記の「グループ編成」を情報処理の観点からとらえなおすと次のようになります。なお、紙片や付箋などを総称して「ラベル」とよぶことにします。
「紙片(ラベル)を読む」ことは、情報を心のなかにインプットする作業です。「紙片(ラベル)を集める」はプロセシングに相当します。「表札をつける」は、情報を圧縮して表現することでありアウトプットです。そして「チーム編成を繰り返す」は、これらの情報処理をくりかえしておこなうことです。
「紙片(ラベル)を読む」ことは、情報を心のなかにインプットする作業です。「紙片(ラベル)を集める」はプロセシングに相当します。「表札をつける」は、情報を圧縮して表現することでありアウトプットです。そして「チーム編成を繰り返す」は、これらの情報処理をくりかえしておこなうことです。
1. グループ編成
*ラベルをよむ
- 「探検(取材)→情報選択→記録」によってえられた約50枚のラベルを、たがいにかさならないようにゆとりをもたせて目の前に四角くならべます。
- それらのラベルをあわてないで端から読んでいきます。読むというよりもながめていけばよいです。
- 3回ぐらいくりかえしてながめます。
- 目の前の情報をしっかり心のなかにインプットします。
*ラベルをあつめる
- 「このラベルとあのラベルの内容は非常に近いな」と、内容のうえでおたがいに親近感をおぼえるラベルが目にとまったら、それらをどちらかの一カ所にあつめます。
- あつめる枚数は2〜3枚を目安とし、多くても5枚とします。
- このようにしていくと、ラベルの小チームがあちこちにできてきます。
- 一方で、どのチームにも入らない「離れザル」が若干でてきます。その「離れザル」をどれかのチームに無理にくっつけてはいけません。
- 最初の段階では「離れザル」は全体の1/3ぐらいあってもかまいません。
*表札をつける(圧縮表現)
- たとえば5枚あつまったら、 あつまったラベルをよく読み、「この5枚の内容を、一行見出しに圧縮して表現するとすれば、どういうことになるか」と自分に問うてみます。
- 5枚の内容をつつみつつ圧縮化して表現できる一文を、あたらしいラベル1枚に書いて、その5枚一組のチームのラベルの上にのせます。
- 一組のチームは1個のクリップでとめます。
- 一番うえのラベルは一組のラベルの「表札」とよばれます。チームの一番うえの表の札(ラベル)ということです。
- 小チームのすべてに「表札」をつけます。
- 本書『発想法』には「一行見出し」と記載されていますが、これは一文につづるという意味であり、ラベルのなかで厳密に1行にしなければならないということではありません。通常は2〜3行になります。重要なことは述語までしっかり記述し一文につづるということです。
- 小チームの「表札」の色は赤色とします。本書『発想法』には青色と記述されていますが、青色は中チームの表札、緑色は大チームの表札とするのが今では一般的になっています。
- 「表札」は、元のラベルよりも1段高いところに位置づけられ、このような圧縮表現により、情報処理の次元が2次元から3次元に高まり、情報処理の効率が一気によくなります。元ラベルがならんでいた平面に縦軸が生じるような感じです。
- 小チーム編成の段階でどこにも入らなかった「離れザル」については、目印として付箋の右下隅に赤点をつけておきます。
*上記の情報処理をくりかえして、中チームを編成する
- 赤色「表札」がついた小チームと「離れザル」(右下隅赤点)を目の前にひろげ、すべてをよく読みます。
- 前の段階と同様にして、小チーム同士のなかでおたがいに親近感があるチームを編成して、いくつもの中チームをつくります。
- このとき、小チームと「離れザル」があわさって中チームをつくることもあります。
- 場合によっては、「離れザル」と「離れザル」とがあわさって中チームをつくることもあります。
- それぞれの中チームには、チームの次元が識別するために青色の「表札」をつけます。
- この段階でも「離れザル」がまだのこっていてもかまいません。それらの「離れザル」目印のために付箋の右下隅に青点をつけます。
- この段階で、赤色「表札」が「離れザル」になる場合もあります。その赤色「表札」の右下隅にも青点をつけます。
*大チームを編成する
- 同様にして、中チーム(青色「表札」)と右下隅青点の「離れザル」をひろげ、大チームをつくっていきます。
- 大チームには緑色の「表札」をつけます。
- この段階でも「離れザル」がのこってもかまいません。それには右下隅に緑点をつけます。
- 大チームの個数(「離れザル」がある場合は、大チームに「離れザル」をくわえた個数)は、5〜10になります。
- 10をこえる場合は、もう一段チーム編成をくりかえします。
2. 図解法
その1:検索図解をつくる
*表札をよむ
*表札を空間配置する
*表札をよむ
- 検索図解のための準備として、あたらしいラベルを用意し、最終の「表札」(大チームの「表札」)をすべて転記します。
- それら最終の「表札」を再度よくよみ味わいます。
*表札を空間配置する
- A3用紙を用意し、テーマを左上にやや大きく記入します。
- 転記した最終「表札」すべてをそのA3用紙上におきます。
- 論理的にもっとも納得がいく位置、おちつきのよい位置に最終「表札」すべてを空間的に配置します。
*図解化
- その空間配置が意味する内容をつぶやいてみて、その空間配置が適切であるかどうかたしかめます。内容がつながってすらすらと説明できればよいです。
- A3用紙に「表札」を固定します。
- 「表札」と「表札」とのあいだに関係記号を記入します。関係記号の例は次です。
- A ー B:AとBとは関係がつよい
- A >-< B:AとBとは対立する
- A → B:AからBへながれる、あるいはAが原因でBが結果
- A ⇄ B:AとBとは相互関係がつよい
その2:細部図解をつくる
*ラベルをよむ
*ラベルを空間配置する
*図解化
- 大チームの束どれか1つをとりだし、再度よく読みます。
*ラベルを空間配置する
- あたらしいA3用紙を用意します。
- 1枚のA3用紙に、1つの大チームの束をおき、中身を展開し、空間配置します。
- 「表札」を奥におき、中身を手前におきます。
- 中チーム→小チームへと中身を順次展開していきます。
*図解化
- すべてを展開しおわったら、大チーム、中チーム、小チームのそれぞれを「島どり」(輪)でかこみます。
- あらたにA3用紙を用意し、別の大チームも同様に展開します。
- すべてての大チームを展開し、各チームごとに「島どり」をします。
このようにして図解ができあがると、最初にあった約50件の情報がグラフィックに整理され、全体像は「検索図解」に、こまかいところ(元データ)は「細部図解」を見ればわかるようになります。
この段階では、 矛盾をあらわす「AとBとは対立する」といった内容があってもかまいません。心の内面に矛盾があるとそれが図解にもあらわれてきます。矛盾は、ことなる価値観をかかえこむことで生じることが多いです。
KJ法図解をつくると矛盾も図式化でき、矛盾を客観的に見ることができます。 矛盾が可視化できると心の整理ができ、矛盾が目に見えてくると克服のためのアイデアがでやすくなり、それを解決するチャンスが生まれてきます。
文献:川喜田二郎著『発想法』(中公新書)中央公論社、1967年6月26日
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