この年表は、宇宙の誕生から現在までの138億年の歴史を、倍率のちがう10個の「レンズ」を通して理解するための資料です。
縮尺のことなる10本の年代軸を「レンズ」とよび、それぞれの時間スケールで見たときにあらわれる重要なイベントが10本の年表にしめされています。
ポイントをピックアップします。
年表の年代軸は左から右に若くなり、いずれも右端が現在になる。150億年、50億年、6億年、7000万年、600万年、100万年、20万年、2万年、2000年、200年と縮尺のことなる10本の年代軸(レンズ)を用意している。1つの年表における右端の部分についてレンズを1つ拡大したものが、下の年表になっている。いくつかの年表では、気温や酸素濃度、海水準などの変動曲線もあわせて示し、その時代にどのような環境変動があったのか、視覚的に理解できるようにしている。この年表を活用して、「時空を自在に飛ぶ」感覚を、ぜひ味わっていただけたらと思う。本書が、宇宙の誕生から現在までのシームレスな地球史を認識する手助けとなり、われわれ地球人が進む未来像を考えるうえで少しでもお役に立てれば幸いである。慣れてきたら、ぜひレンズ11として「自分史・家族史」を作ってもらいたい。われわれの人生も地球の歴史の一部であり、そして、現在がこれからの未来へつながる位置にあることを実感できるはずである。レンズ1:宇宙史(150億年前〜現在)138億年前、無からの猛烈な体積膨張「インフレーション」で宇宙の歴史ははじまった。レンズ2:地球史(50億年前〜現在)45億5000万年前に地球の核ができる。最古の生物化石は35億年のものである。レンズ3:顕生代(6億年前〜現在)5億3000万年前におこった「カンブリア大爆発」により生物は大型化した。レンズ4:新生代(7000万年前〜現在)グリーンハウス(温室世界)からアイスハウス(氷室世界)へ徐々に気候が寒冷化する時代である。レンズ5:人類時代(600万年前〜現在)440万年前にラミダス猿人、350万年前に二足歩行、人類が進化する。レンズ6: 氷河時代(100万年前〜現在)地球規模の寒冷化が顕著になる。レンズ7:最終氷期(20万年前〜現在)19万5000年前、ホモ・サピエンスが出現する。レンズ8:先史・文明時代(2万年前〜現在)1万6500年前、縄文時代が始まる。レンズ9:歴史時代(2000年前〜現在)375年、大和政権が成立する。レンズ10:近現代(200年前〜現在)産業革命がおこる。2度の世界大戦がおこる。
この資料は、時間スケールのことなる10本の年表を同時に一覧できることに最大の特色があります。この「スーパー年表」を見ると、レンズ(時間スケール)のとり方によって、歴史の見え方ががらりとことなってくることがよくわかります。
これは、空間的な見方と対比するとおもしろいです。空間スケールのとり方によっても世界の見え方はかなりちがってきます。たとえば、地表から地上を見る、高い塔から地上を見る、高い山から見る、人工衛星から見る、月から地球を見るなど、空間的な視点を変えると見える範囲・精度は変わってきます。レンズの倍率によって見える世界はことなるわけです。
このような、空間的な視点・スケールを変えて見ることは比較的やりやすかったのですが、一方の時間的なスケールを変えて見るという見方は今まではむずかしかったです。多くの人々の場合、上記のなかの「歴史時代」あるいは「近現代」ぐらいしか視野に入っていない状況ではないでしょうか。
そのような意味で、「空間レンズ」ならぬ「時間レンズ」を提供するこの「スーパー年表」は画期的であり、このような時間スケールごとに複数の年表を対比・一覧できる資料は今まではなかったです。
この「スーパー年表」を見ていると、人間の存在が、宇宙空間のなかで小さな存在であるばかりでなく、時間的歴史的にも小さな存在であることがとてもよくわかります。
まずは、この「スーパー年表」を活用して10種類の時間「レンズ」を身につけるのがよいでしょう。
そして、それぞれの「レンズ」(時間スケール)で歴史をとらえなおし、それぞれの「レンズ」を通して見える歴史イベントを想像(イメージ)してみるとよいでしょう。どこまで想像できるでしょうか。歴史とは想像するものです。よく想像できない場合は本書の解説書をみたり、インターネットで検索したりして理解をふかめることが大切です。
このようにして、時間を自在にとびながらイメージ訓練をしていると、今までの固定した見方から脱却でき、さまざまな観点からしかも重層的な見方ができるようになり、あらたな発想も生まれやすくなります。
文献:清川昌一・伊藤孝・池原実・尾上哲治著『地球全史スーパー年表』岩波書店、2014年2月18日