160412 主体
図1 主体と環境とをセットにしてとらえる

生命とその進化は、主体だけでなく環境にも注目して主体と環境とをセットにしてかんがえると理解が一層すすみます。これは、人間をふくむあらゆる生命についていえることです。

国立科学博物館で開催中の「恐竜博 2016」では恐竜の食べ物についての展示・解説もしています(注)。

南米・チリから 2014年、チレサウルスというめずらしい恐竜について報告がありました。


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チレサウルス(平行法で立体視ができます)


チレサウルスは恐竜のなかの竜盤類の獣脚類の一種です。チレサウルスの歯は先端が大きくすりへっていました。これは、植物繊維をすりつぶして食べる植物食の恐竜の歯に似ています。したがってチレサウルスは植物食だったと想像されます。すりつぶして植物を食べる獣脚類が発見されたのはこれがはじめてです。

恐竜の進化の過程において最初の恐竜は肉食だったとかんがえられています。しかしその後の進化で植物を食べる恐竜が出現しました。植物というあたらしい食資源の開拓があったのです。

恐竜が植物食を開始してそのご繁栄できた背景には環境の変化があったことが想像できます。実際、恐竜が出現した三畳紀後期、竜脚類をはじめ巨大な体をもつ種類があらわれたジュラ紀、さまざまな鳥盤類恐竜があらわれ繁栄した白亜紀、いずれの時代にもたしかな植生の変化があったことが知られています。


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クラドフレビス(三畳紀後期の植物化石)
(交差法で立体視ができます)


このように恐竜の進化を想像するときには恐竜という生体だけでなくその環境にも注目しなければなりません。恐竜は環境と一体になって進化してきたのです。恐竜とその環境とをセットにしてとらえるようにします。

このことは恐竜にかぎらずあらゆる生命とその進化をかんがえるときに言えることです。人間の場合でもそうです。

恐竜と環境とのセットを一般化して主体と環境とのセットと言いかえると、これは「主体-環境」系とよぶこともできます(図1)。このモデル(図式)において主体は、恐竜であってもほかの生物であっても人間であってもよいです。

主体は、環境から食べ物などの物質をとりいれ(インプット)、不要な物質を排出します(アウトプット)。インプットとアウトプットとのあいだでプロセシングを主体はおこないます。このように「主体-環境」系は〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムになっています。

生命とその進化をかんがえるときにはこのモデルをおもいうかべると理解が一層すすむでしょう。


▼ 注
会場:国立科学博物館
会期:2016年3月8日(火)~6月12日(日)

▼ 参考文献
真鍋真監修『恐竜博 2016』(展覧会カタログ)朝日新聞社発行、2016年
※ 展覧会場のショップで購入できます。