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写真1 発掘された化石の断片(注1)

歴史を知ろうとおもったら断片的な情報をあつめて当時の様子を想像するようにします。想像することは仮説をたてることでもあります。

国立科学博物館で開催されている「恐竜博 2016」(注2)では恐竜学者たちが化石の断片から恐竜を復元していく過程について理解することができます。

恐竜の研究においては恐竜学者たちはフィールド調査からはじめ、恐竜の化石を発見し発掘します。化石を発掘しても恐竜の全身骨格がすべて収集できることはなく、骨格の断片しか見つかりません(写真1)。

しかし恐竜学者たちはジグソーパズルにとりくむようにして、また関連情報も参照しながら全身骨格を復元していきます(写真2)。


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写真2 クリンダドロメウスの復元された全身骨格
(平行法で立体視ができます)

立体視のやり方 - ステレオグラムとステレオ写真 - >> 


写真のクリンダドロメウスは、中国にちかいロシア・シベリア南東部のジュラ紀中期〜後期の地層から発掘されました。後肢の先端部と尾にはウロコが、頭と胴体には短針状の羽毛が、上腕骨・大腿骨・脛骨のまわりにも羽毛が確認されました。このようなデータから、クリンダドロメウスは羽毛をもった恐竜であると想像され、写真3のように生体が復元されました


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写真3 クリンダドロメウスの生体復元
(平行法で立体視ができます)


さらに当時の環境を想像して写真4の生態復元図をえがきました。


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写真4 生態復元図(注1)


このように恐竜学者たちは、化石の断片をくみあわせて全身骨格を復元し、生体を復元し、生態図をえがいていきます。断片的な事実・データから当時の様子や進化の過程を大胆に想像していきます。想像するとは仮説をたてることでもあります。

この方法は、大量の定量的データを統計学的に処理したというのとはちがい、断片的情報をもとにして推理したということです。これは推理小説の方法とおなじです。たとえば刑事コロンボは現場の証拠を総合して事件の全容をみごとに推理していきます。

恐竜の研究のように、すでに絶滅した過去の生物や生物の歴史を研究する場合にはこのような方法が有効です。実際には、生物の歴史だけでなく人間の歴史にもおなじ方法でアプローチできます。断片的情報を総合して想像すればよいのです。すぎさった昔の出来事は想像するしかありません。歴史とは想像するものです。この想像という方法は誰にでもできるとてもおもしろい方法です。
 



クリンダドロメウスは羽毛をもった恐竜だったことから、最初から恐竜は羽毛をもっていたのではないかとかんがえられるようになりました。羽毛をもっていたとすると、ほかの爬虫類とはちがい恒温動物に恐竜は進化しはじめていたことになります。恐竜は、直立型の足をもったことにくわえて羽毛をもって恒温動物になったことで、ほかの爬虫類よりも活動時間を長くすることができ、それによって広範囲で繁栄することができたのかもしれません。

羽毛をもった恐竜・クリンダドロメウスの発見は大発見でした。恐竜学は急速に進歩しています。


▼ 注1(引用文献)
真鍋真監修『恐竜博 2016』(展覧会カタログ)朝日新聞社発行、2016年
※ 展覧会場のショップで購入できます。

▼ 注2
会場:国立科学博物館
会期:2016年3月8日(火)~6月12日(日)

▼ まとめ記事
想像や推理の方法を知る - 国立科学博物館「恐竜博 2016」(まとめ&リンク)-