自分が住んでいる地域の特性をよくしらべ、そこでおこりうる災害を予想して地震災害にそなえなければなりません。

川手新一・平田大二著『自然災害からいのちを守る科学』(岩波書店)は、地震、津波、火山噴火、集中豪雨、豪雪、台風、竜巻、雷などの災害とこれらの対策についてわかりやすく解説しています。日本列島でおこりうるさまざまな自然災害を概観しているのが本書の特色です。


目 次
序 章 自然災害が多くおこった2011年
第1章 日本の地理的条件と自然災害
第2章 日本におこる自然災害
第3章 自分の住む地域の地盤や地形を知ろう
第4章 身の回りを知り、いざというときに備えよう
終 章 最後は自分で考える


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『自然災害からいのちを守る科学』の第2章の1では「地震がひきおこす災害」について以下のように解説しています。

 
■ 地震の大きさをあらわす
地震の大きさをあらわす用語には2つあります。ひとつは震度、もうひとつはマグニチュード(M)です。

震度は、それぞれの場所ごとの揺れの大きさをしめすもので、1回の地震に対して場所ごとにいくつもの数値がでます。震度0から震度7まであります。震度7では、立っていることができず、飛ばされることもあります。固定していない家具のほとんどが移動したりたおれたり飛ぶこともあります。壁のタイルや窓ガラスが破損、落下、補強されているブロック塀も破損するものがあります。

一方、マグニチュードは地震のエネルギーの大きさをあらわすのもで、ひとつの地震に対してひとつの値が決まります。2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震のマグニチュードは 9.0 でした。マグニチュード7以上を大地震、7.8 程度以上を巨大地震とよびます。


■ 地震の揺れによって災害がおこる
地震の揺れによってひきおこされる災害には次のようなものがあります。
 
  • 家屋倒壊
  • 地盤災害:崖崩れ、地滑り、岩屑なだれ(岩屑流)、土石流、液状化
  • 津波
  • 二次災害:火災など


■ 家屋倒壊
日本の都市の多くは平野や低地に集中しています。平野や低地をつくる地層はほとんどが軟弱な地層である沖積層です。このような軟弱地盤の上に立つ家屋は地震の揺れで倒壊しやすいです。

1923年におきた関東大地震ではこのような場所での家屋倒壊の被害が多数でました。


■ 崖崩れと地滑り
崖崩れは、比較的急な斜面でくずれた岩塊が速い速度で移動する現象です。地滑りは、比較的なだらかな斜面で岩塊が比較的ゆっくり移動する現象です。2つの現象は連続的であることも多く、崖崩れと地滑りとをあわせて斜面崩壊とよびます。

1984年の長野県西部地震(M6.8)では、木曽御岳山で大規模な斜面崩壊がおこりました。標高 2500m 付近で崩壊した斜面は、幅 500m、深さ150m にもなりました。くずれだした 3600m³ にもおよぶ岩塊は谷をうめ、尾根からあふれだしながら平均時速 80km で流下し、崩壊地点から 11km まで到達しました。


■ 土石流と岩屑なだれ(岩屑流)
土石流は、崖崩れや地滑りでくずれでた土砂や石が大量の水をふくんで洪水のようにながれくだる現象であり、山津波ともよばれます。台風などの豪雨時に一般的には発生しますが、地震の揺れによって発生することもあります。崖崩れや地滑りの土砂がはじめから大量の水をふくんでいてそのまま土石流となる場合と、崩れおちてきた土砂が川をせきとめて天然のダム(せきとめ湖)をつくり、それが決壊して土石流になる場合とがあります。

一方、岩屑(がんせつ)なだれは、水分の少ない大量の岩塊や土砂が空気などをまきこんで高速でながれくだる現象です。

1923年の関東大地震では、神奈川県の根府川で大きな土石流が発生、集落をうめつくしました。1984年の長野県西部地震では岩屑なだれと天然ダムの決壊による土石流が発生しました。


■ 液状化
液状化とは、しまりがわるい砂層の中に地下水が大量にはいりこんで砂粒がバラバラになって液状にうごきやすくなる現象です。圧力が高くなった地下水が砂とともに地表へ噴出することもあり、これは噴砂現象と言います。
 
液状化がおきやすいところは海岸埋立地や砂丘地、旧河川敷、低い自然堤防です。液状化や噴砂現象によって、沈下・亀裂・陥没・隆起などの地盤の変形がおこります。建築物や構造物がしずみこんだり傾斜したり、地下にある上下水道館・ガス管・マンホール・タンクなどがうきあがります。

東方地方太平洋沖地震では、千葉県浦安市や神奈川県横浜市など、海岸部や旧河川敷の埋め立て地などで液状化が発生し被害がでました。


■ 津波
普通、大きな地震があれば大きな津波がくると予想できます。しかし断層破壊がゆっくり進行する地震の場合は、揺れが小さくても大きな津波を発生させることがあります。このような地震は「津波地震」とよばれます。

1896年(明治29年)の明治三陸津波をおこした地震はこのタイプで、陸上での最大震度は4でした。発生したのが夜8時でもあったため不意をおそわれた状態になり、死者およそ2万2000人という日本で最大の津波災害となりました。


■ 地震による火災
地震がおきたあと火災がおこることがあります。

1995年の阪神・淡路大震災は冬場におきたため電気をつかう暖房器具からの出火が多数ありました。倒壊した建物の中で、停電によって一時的に止まっていた暖房器具が電気の復旧とともにうごきだし、家屋に火がうつりました(注)




以上のように地震災害にはさまざまなものがありますが、これらのすべてがひとつの地域で同時におこるということではないでしょう。自分の住んでいる地域においてこれらのうちのどれがおこりうるかをまずは確認しなければなりません。自分の住んでいる家・地盤・立地条件などを見直しててそなえるべきです。

日本全国どこでも地震はおこりますが、地震によってひきおこされる災害は地域によってことなります。災害はとても地域的なものです。それぞれの地域の自然環境の特性をつかむことが重要です。



▼ 引用文献
川手新一・平田大二著『自然災害からいのちを守る科学』(岩波ジュニア新書)岩波書店、2013年5月21日
自然災害からいのちを守る科学 (岩波ジュニア新書)

▼ 注
電気の復旧による暖房器具からの出火をふせぐためには、大きな揺れを感じたらブレーカーが自動的に切れる装置を設置しておくとよいです。


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