写真集をつかって世界各地の世界遺産を大観したら、今度は、興味のある特定の世界遺産に注目すると理解が一段とふかまります。


『感動の絶景! 空から見た世界遺産』(コスミック出版)は多数の世界遺産を紹介していますが、今回は、「フィレンツェ歴史地区」(イタリア/1982年に文化遺産として登録)に注目してみました。


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フィレンツェは、イタリア中部のトスカーナ州の州都です。紀元前にエトルリア人が創設、13〜16世紀ごろには、経済や政治面でフィレンツェを支配したメディチ家のもとでルネサンス開花の中心都市となりました。

そのころの建造物は今でものこっていて「街全体が美術館」といわれています。代表的なものは、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂やパラッツォ・ヴェッキオなどです。フィレンツェ出身の建築家 ブルネッレスキ(1377-1446)が設計した、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の二重構造の円蓋(クーポラ)はルネサンス建築の代表とされます。ボッティチェリやレオナルド=ダ=ヴィンチなどの作品は、かつてはトスカーナ大公国の行政庁舎であったウフィツィ美術館に収蔵されています。



 
ルネサンス様式」はヨーロッパ建築のなかでも特に重要な建築様式です。ルネッサンスとは再生という意味であり、古代ギリシャやローマなどを模範とした15〜16世紀の様式です。幾何学図形を基調としたバランスのとれた造形が特徴です。

ヨーロッパの建築様式にはこのほかに、「ビザンツ様式」「ロマネスク様式」「ゴシック様式」「バロック様式」「ロココ様式」などがあります。

ビザンツ様式」は、アナトリア半島(現在のトルコ)を中心としたビザンツ帝国でさかえた様式で、6世紀ごろに最盛期をむかえました。

ロマネスク様式」のロマネスクとは「ローマ風」という意味であり、バリシカという形式を発展させた様式で10世紀ごろにさかえました。

ゴシック様式」のゴシックとは「ゴート風」という意味で、高い天井と色鮮やかなステンドグラスが「神は光なり」という世界観をあらわしています。12〜15世紀にさかえました。

バロック様式」のバロックとは「ゆがんだ真珠」といった意味であり、16世紀末〜18世紀中頃にかけてさかえました。過剰な装飾や凹凸の強調などを特徴とします。

ロココ様式」はバロック様式の延長線上にある、軽快で優美な室内装飾が特徴の様式です。

このようにヨーロッパの建築様式は、ギリシャ・ローマ時代の古典様式を基礎とし、「ビザンツ」→「ロマネスク」→「ゴシック」→「ルネサンス」→「バロック」→「ロココ」という順序で展開してきました。

このようなヨーロッパの建築様式の基本と歴史をあらかじめ知っておけばヨーロッパに関する理解が一段とふかまり、世界遺産の写真集を見るときに、あるいはヨーロッパ旅行をするときにたのしみが倍増するでしょう。建築様式を知ることは重要なポイントです。




このように写真集を見て世界各地の世界遺産を大観したら、つぎの段階としてひとつの世界遺産に注目してみる、あるいは特定の課題を設定してみると理解が急にふかまります。そして第3段階目に感想を書きだすなり旅行計画をたてるようにします。

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図 大観をしたら注目する


▼ グーグルマップ:フィレンツェ



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▼ 引用文献
『感動の絶景! 空から見た世界遺産』コスミック出版、2015年12月10日
感動の絶景! 空から見た世界遺産 (COSMIC MOOK)

世界遺産検定事務局著『くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト』マイナビ、2013年12月25日