本書は、記憶法の基本について解説しています。記憶は、ただおぼえればよいというのではなく、情報処理システムの一部として記憶法を実践し、よくできたアウトプットにつなげていくことが大切です。
以下に、ポイントをピックアップします。
記憶法は、巧みな情報操作法と連動していなければなりません。土台となる知識を樹木の根幹に、新しい知識を枝葉にたとえてみるといいでしょう。ある程度ラフな記憶(根幹の記憶)が覚えられると、さらに次の細かい段階の記憶(枝葉の記憶)が定着しやすくなります。記憶の際には、表面的な意識だけでなく、潜在意識と関連の深い感情や情緒の側面を十分に活用することが必要になります。記憶力を伸ばす三大要素は、記銘、保持、想起です。何かまとまったことを学んだり、頭に入れたりしたら、同様に、すぐにざっと思い出す習慣をつけるように心がけてください。どんな分野でも、専門家と呼ばれる人は、その分野に関してさまざまな図式のレパートリーを頭の中にもっているものです。また専門家とは、ある分野に関する幅広い定量的な知識(数字で表せるようなデータなど)の体系をもっている人のことです。自分が征服しようと念ずる分野に関して、自分の内部に、定量的で体系立ったデータバンクを効率よく構築していきましょう。・固定法「固定法」(Yoke method)は、「情報を結合するテクニック」であり、「情報の自由な連結の中から、新しい発想力を得る方法」になっています。皆さんがものを覚える前に大事なことは、ライフ・テーマをきちんと設定しておくことです。自分が何を追求しているのか。何のために覚えようとしているのか。何のために情報収集をしているのか。その柱を明確にして立てておいてほしいのです。そうすれば、その柱の周りに自然に情報がつながってきます。人生の幹をしっかり固定させましょう。たとえば、ライフ・テーマとして三つの柱をもち、この三本の柱の間であらゆることをします。
・空間法「空間法」(Space method)は、「心の三次元空間を操作するテクニック」であり、「立体的なマインド空間をつくりあげる方法」です。本を読んでいる周囲の空間をしっかり眺めてみましょう。後ろもしっかり見るのです。その空間をできるだけ覚えてください。どこに何があるのでしょうか。視点を自由に変えられるようなイメージの空間をつくってください。いろいろなことを覚えるとき、すべてそういうイメージ空間をつくることができるようになります。どこの部屋に行っても、周囲をくるりと見て覚えましょう。すると、まるごとの空間の中で、いろいろな記憶が残るようになります。
・三点注視法周囲をよく見渡して、三ヵ所を順番に見つめます。ここで大切なのは、風景の一部をなす何かを明確に見ることです。そして、目を閉じて、見つめた三点の様子を順番に明晰に想起するのです。以上の操作を何回か繰り返してください。三点が三角形をなしていると見なして行うと全体の印象がまとまりやすいでしょう。この訓練で入力を鍛え、瞬間記憶の力と入れたばかりのものを想起する力を鍛えてください。
上記のように、まず記憶の前に、ライフ・テーマを明確にする必要があるでしょう。そして記憶法は、何といっても、自分のもっとも興味のある分野の概略(基本)をおぼえることからはじめるのがよいです。 もっとも興味のある分野の記憶ができると、それに関連づけてあたらしいこともおぼえられます。 それに対して興味のない対象では意欲がわかないので、潜在意識が拒絶反応をおこして記憶する作業を邪魔してしまいます。
空間記憶法の実践では、動物園・植物園・博物館・書店などにいって、その空間を利用するとすぐに効果があがります。
たとえば動物がすきな人は動物園にいって、それぞれの動物とその関連情報を、それが展示されている場所(動物園内の位置)とともにおぼえます。さらに、動物園の中の特定の場所で解説書や関連書籍を読んで、読んだその場所にむすびつけてその本の内容やポイントをおぼえます。そして、その場所をおもいだすことによって、そこで読んだ本の表紙・題名・図表や写真・ポイントなどをおもいだせるように訓練します。
同様に、植物がすきな人は植物園に、民族がすきな人は民族学博物館に、歴史や文化がすきな人は国立博物館に、地学がすきな人は自然史博物館に行って空間記憶法を実践すればよいでしょう。
そのような特定の場所に行ったら、カレンダーに(その日付の箇所に)その場所をメモしておきます。こうしたことをくりかえしていると、たとえば年末に1年分のカレンダーのメモをザーッと見直すことにより、その場所とともに、そこでおぼえた情報をザーッと想起できるようになります。カレンダー上のメモや、その場所がのっている地図は、記憶された情報を想起するためのインデックスになります。つまり、心の検索システムができるわけです。
さらに、記憶したことをもとにして、見えなかったところを想像したり仮説をたてたりして、よくできたアウトプットをだすことを目指すとよいでしょう。ただ覚えるだけではなく情報処理の一環として記憶法を実践することが重要です。
文献:栗田昌裕著『記憶力がいままでの10倍よくなる法』(知的生きかた文庫)三笠書房、2002年5月
関連ブログ:
みごとに体系化された記憶法 〜レビュー:栗田昌裕著『栗田博士のSRS記憶法』〜
時と場所にむすびつけて記憶する 〜栗田昌裕著『絶対忘れない!記憶力 超速アップ術』〜
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