人間と自然環境とが共生するうえで文化的景観の概念が重要です。地球環境問題の解決の鍵のひとつが文化的景観にあるといえます。


ユネスコの世界遺産には「文化的景観」という概念があります。これは、人間が自然とともにつくりあげた景観をさします。この概念が適用された世界遺産は文化遺産に分類されるものの、文化遺産と自然遺産との境界に位置する遺産とされます。モデル(模式図)であらわすと下図のようになります。

160305b 文化的景観
図 文化的景観の位置づけ


ある地域において、人間の生活領域の周辺には自然環境がひろがっています。人間と自然環境と相互作用、相互のやりとり(注1)によって文化的景観が形成されます(注2)。




文化的景観には次の3つのカテゴリーが設定されています。


  1. 意匠された景観:人間によって設計・創造された景観。庭園・公園・宗教的空間など。
  2. 有機的に進化する景観:社会や経済・政治・宗教などの要求によって生まれ、一方で自然環境に対応して形成された景観。「残存する景観」と「継続する景観」に分けられます。
  3. 関連する景観:自然の要素が大きな影響をあたえ、宗教的・芸術的・文学的な要素とつよく関連する景観。


人間と自然環境とが共生するうえで文化的景観は非常に重要な概念です。地球環境問題の解決の鍵が文化的景観にあるといってもよいでしょう。


▼ 注1
人間と自然環境との相互作用のうち、自然環境から人間への作用はインプット、人間から自然環境への作用はアウトプットとよぶことができます。

▼ 注2
西欧文明には、文化的景観という概念は元々ありませんでした。西洋文明では人間と自然とを峻別し、人間は自然を支配すればよいとかんがえていました。こうしたところから文科系と理科系という2大分野が生まれました。しかし近年になって、これではやっていけない状況が増え、西欧系の人々の中にかんがえ方をあらためる人々が出てきました。文化的景観はこのような思想の変化もあらわす重要な概念です。