わたしたち人間が生きている世界あるいは地球を「人間-文化-自然環境」系としてとらえなおすと多様な情報が統一的に整理できます。


世界には、実に多様な情報が大量に分布しています。わたしはこれらを整理するために、人間・文化・自然環境の三者に世界を区分し、下図のように配置しモデル化(図式に)してみました(図1)。これを「人間-文化-自然環境」系とよびます。系とはシステムということです。

160227 文化
図1 「人間-文化-自然環境」系


「人間-文化-自然環境」系において主体となるのはわたしたち人間です。人間の周辺領域には自然環境がひろがっています。そして人間と自然環境との相互作用(やりとり)によって文化が生じるとかんがえるのです(注)。文化とは、生活インフラ・産業・社会制度・学問・芸術・宗教などのすべてをふくみます。

人間と自然環境との相互作用のうち、自然環境から人間への作用はインプット、人間から自然環境への作用はアウトプットとよんでもよいです。




しかしヨーロッパ文明にはこのようなかんがえ方は元々ありませんでした。人間と自然とは別ものであり、人間と自然とは対立し、人間は自然を支配すればよいとかんがえていました。このような概念から文科系と理科系という相ことなる2大分野が生まれました。また文化財はあくまでも人間がつくったものであり、文化財の保護と自然の保護とは別々におこなわれていました。




しかしながら近年では、人間と自然とを分けてかんがえることは現実的でなくなったとかんがえる人々が増えてきました。

たとえば、1972年に、ユネスコ総会で採択された「世界遺産条約」は、文化遺産と自然遺産をひとつの条約のもとで保護しようとしてます。

その後、世界遺産登録の概念は次第に変化し、1992年には、「文化的景観」というあたらしい概念が採択されました。これは、人間が自然とともにつくりあげた景観のことです。

現代では、人間と自然とを峻別するのではなく、人間と自然との交流さらに人間と自然との共生を重視するように変わってきています。ヨーロッパ系の文明人もかなり柔軟になってきました。




図1のモデルによれば、文化とは、人間と自然環境とのいわば "共同作業" の結果であり、人間と自然環境とは文化を介してかかわりあっているということになります。たとえば世界遺産における「複合遺産」などにその典型がみられます。

世界各地に分布する非常に多数の世界遺産について理解したり記憶したりするときにもこのモデルがつかえます。文化遺産と自然遺産とは下図のように位置づけられます。複合遺産はこのモデル全体ということになります。

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図2 世界遺産の位置づけ


このように、単純なモデルをつかうことは、世界を構成する多種多量な情報を整理するためにとても役立ちます。モデルをえがくことは情報処理の重要な方法のひとつといえるでしょう。


▼ 注
人間と自然環境との相互作用(やりとり)によって文化が生じるという仮説をたてたということです。

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▼ 参考文献