世界遺産の「登録基準」に注目するとそれぞれの世界遺産をよりふかく理解できます。


地球環境問題にとりくんだり地球の保全をすすめていくうえで「世界遺産」について理解することはとても重要なことです。2015年7月現在、世界遺産の登録件数は1031件、163の国と地域に世界遺産が存在しています。日本では15件が登録されています。

世界遺産において特に重要なのが「登録基準」です。これを知ることによって世界遺産の理解が一層ふかまります。登録基準は以下の10項目です。
 

文化遺産
(ⅰ)人類の創造的資質を示す傑作(KW:傑作)
(ⅱ)文化交流を証明する(KW:文化交流)
(ⅲ)文明や時代の証拠を示す(KW:時代の証拠)
(ⅳ)建築技術や科学技術の発展を証明する(KW:建築・科学技術)
(ⅴ)独自の伝統集落や、人類と環境の交流を示す(KW:環境との交流)
(ⅵ)歴史上の出来事や伝統・宗教・芸術と関連する(KW:歴史・伝統)

自然遺産
(ⅶ)自然美や景観美、独特な自然現象を示す(KW:自然美)
(ⅷ)地球の歴史の主要段階を証明する(KW:地球史)
(ⅸ)動植物の進化や発展の過程、独自の生態系を示す(KW:進化と生態系)
(ⅹ)絶滅危惧種の生息域で、生物多様性を示す(KW:生物多様性)

※ KW:キーワード


上記の(ⅰ)〜(ⅵ)のいずれかの基準で登録されると「文化遺産」に、(ⅶ)〜(ⅹ)のいずれかで登録されると「自然遺産」に、両方の登録基準にまたがるものは「複合遺産」になります。

国内外をとわず、それぞれの世界遺産に接したときに、どの登録基準によって世界遺産に登録されたのかを知ると、その世界遺産の性格を端的にとらえることができ、またそれを保全していくために何に力を入れているのか、あるいはや問題点や課題がわかりります。

たとえば日本の世界遺産のひとつである「富士山 - 信仰の対象と芸術の源泉 -」の登録基準はつぎの2項目です。
 
 (ⅲ)文明や時代の証拠を示す
 (ⅵ)歴史上の出来事や伝統・宗教・芸術と関連する

つまり富士山は文化遺産として登録されたのであり、自然遺産でも複合遺産でもありません。本来なら複合遺産として登録されるべきだったおもいますが、自然遺産としての条件をみたさなかたのでしょう。問題・課題がうきぼりになってきます。

世界遺産は、情報量が非常に多くてとらえにくいといった感じがしますが、登録基準に注目することによっていろいろなことがわかってきます。

世界遺産には、保全活動などを実際にすすめていくという能動的・実学的側面があります(注)。この点が、従来の地理や歴史の勉強とはことなりおもしろいところです。


▼ 注
世界遺産に登録されたことによって観光客が殺到しオーバーユースになるという問題が一部に生じています。これについてはあらためて検討します。

▼ 参考文献