日本文化の特色である受容をインプットの方法としてとらえなおし、情報処理をさらにすすめていくことが大事です。


日本文化を歴史的にとらえてみるとその特色は受容の文化であり重層の文化です。つまり基層文化のうえに外来文化をかさねていき、日本流に改善するというやり方です。このような受容と重層の文化はオリジナリティーや独自性によわい傾向にあります。
 
しかし江戸時代中期には日本文化はある程度 独自の発展をとげました。鎖国をしていたことも影響しています。角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第10巻(注1)では、江戸時代中期に花咲いた「町人文化」を紹介しています。


1.比べてみよう文化
■ 元禄文化:上方ゴージャス
元禄時代に発達した上方中心の文化です。豪華で派手なものでした。「燕子花図屏風」(かきつばたずびょうぶ)、蒔絵螺鈿野々宮図硯箱(まきえらでんののみやすずりばこ)、人形浄瑠璃など。

■ 化政文化:江戸カジュアル
文化・文政年間に発達した文化です。ユーモアがあって庶民がたのしめるものでした。浮世絵、「名所江戸百景大はしあたけの夕立」、相撲など。


2.当時の人々の生活
「二十六夜待」(にじゅうろくやまち)とよばれるお月見のイベントがありました。屋台がたくさんでました:寿司屋、冷や水売り、イカ焼き屋、天ぷら屋、そば屋、だんご屋など。


3.時代のカギをにぎる人物:二人の個性派
■ 平賀源内:1728〜79年。長崎や江戸で蘭学や薬学・本草学などをまなび、発明家・芸術家・本草家の側面を持つ多才な人物でした。本草学とは、植物や鉱物から薬をつくる学問です。代表作に、「物類品隲」(ぶつるいひんひつ)「薬箪笥と薬研」「エレキテル」「おみき天神」などがあります。

■ 葛飾北斎:1760〜1849年。人気の浮世絵師でした。代表作に、「富嶽三十六景」(ふがくさんじゅうろっけい)、「北斎漫画」などがあります。




日本文化は受容の文化であり重層の文化ですから、独自性や個性がよわい傾向にあり自己主張をしません。しかし江戸時代の文化をみなおすと、このような文化でも創造性を発揮できることがわかります。「欧米の方がすごい!」というように悲観する必要はまったくありません。日本人は日本文化をみなおして、日本文化のようなやり方も可能なんだということを世界にしめせばよいとおもいます。

世界に目を転じてみると、ヨーロッパ文明、イスラム文明、ヒンドゥー文明、中国文明といったれっきとした文明が分布しています。これらの文明はそれぞれに独自性があって強力な個性をもち、自己主張ばかりしていて争いが絶えません。「文明の衝突」がおこっているのです(注2)。

それに対して日本は自己主張をするのではなく何でも受けれることができます。情報処理の観点からいうと外来文化のインプットがよくできるということです。アウトプットばかりしているのではなく積極的にインプットができる。この点が重要です。

インプットの方法として受容とらえなおせばよいのです。あとはプロセシングをいかにすすめるか。よくできた情報処理をおこなうことが課題になります(下図)。

160222 受容
図 インプットの方法として受容をとらえなおす


日本のすすむべき道は「文明の衝突」に参加することではありません。日本流に世界平和のために貢献できるはずです。
 

▼ 注1
角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第10巻『花咲く町人文化』KADOKAWA、2015年6月30日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 (10) 花咲く町人文化 江戸時代中期

▼ 注2
わたしは南アジアに行って、イスラム文明、ヒンドゥー文明、中国文明の対立を目の当たりにしました。またニュースをみていると、ヨーロッパ文明とイスラム文明とがふかく対立していることがわかります。

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