歴史の大きな流れをつかんだら、「掘り下げポイント」を決めてそこをくわしくしらべると考察がすすみます。


角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』全15巻(注1)を最後まで一気にみると日本史の大きな流れをつかむことができます。

大きな流れをつかんだら、次は、興味のある時代や時期を「掘り下げポイント」として選択し、その部分をくわしくしらべてみるとおもしろいです。

そして、大きな流れと掘り下げポイントとをくみあわせると考察がすすみます。




わたしは全巻を一気に見たうえで、古墳時代末期(あるいは飛鳥時代初期)と平安時代末期を「掘り下げポイント」として選択しました。そしてつぎの出来事にとくに注目しました。


  • 587年 蘇我馬子・聖徳太子らが、物部守屋をほろぼす
  • 1156年 保元の乱


587年、蘇我氏らが物部氏をほろぼしてから、先進文明を「模倣」する流れが決定的になりました。1156年の「保元の乱」以後、武士団の流れが支配的になりました。そしてこれらの結果「重層文化」が形成されていき、この大きな潮流は1980年代までつづきました。しかし1990年代に入ってから潮流が変わり、時代は大きく転換しました。1990年代からの潮流はグローバル化です(注2)。

歴史は、それぞれの時代を生きた人々がつくってきたものです。

しかしこまかい事象にはとらわれないで大きな潮流を見てしまうと、むしろ、歴史が人々をうごかしてきたとでも言いたくなるような気持ちが生じてきます。大きな潮流のなかに「必然の糸」をみとめることはできないでしょうか。それぞれの時代のもとで人々は生かされていた。それぞれの時代の転換点が人材を生みだしてきたと。




『日本の歴史』全15巻をみて歴史の流れをつかむ方法を第1の方法、「掘り下げポイント」をくわしくしらべる方法を第2の方法とするならば、これらのどちらがすぐれているかではなくて、両者はつかいわけ、そして組みあわせていくのがよいでしょう。

アナロジーをもちだすならば、たとえば東京から大阪へ移動するとき、飛行機で一気に飛んで上空から見わたすと東京から大阪までの全体像がよくわかります。しかし「掘り下げポイント」としてたとえば静岡を選択し、静岡に実際に行ってみて市内をあるいてみると、時間は非常にかかりますが都市や街の様子、人々の暮らしなどがくわしくわかります。

第1の方法と第2の方法とでは見え方が根本的にちがうことに気がつくべきでしょう。

第1の方法は大観の方法であり、なるべく短時間で高速でおこなったほうがうまくいきます。時間をかければかけるほど細部が見えてきてしまいます。一方の第2の方法では時間をかければよいのです。

第1の大観の方法で漫画をつかう利点がここにあります。全15巻といっても漫画ですから3時間もあればすべてを見ることができます。そしてここぞとおもう「掘り下げポイント」については時間をかけます。すると考察がすすみます(下図)。個々の事象を個別に分析的に見ているだけだと潮流は見えてこないとおもいます。


160219 ポイント
図 歴史をまなぶ3段階モデル(注2)




▼ 注1
山本博文監修『日本の歴史』(角川まんが学習シリーズ 全15巻)KADOKAWA、2015年8月6日
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全15巻定番セット

▼ 注2
歴史の潮流をよみとることは、わたしたちが生きていく21世紀が今後どのようになるかを予想するためにも必要なことです。

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▼ 注2
歴史をまなぶ3段階モデルは世界史や地球史をまなぶためにもつかえます。