皮膚はセンサー、脳はプロセッサーととらえると皮膚感覚の仕組みがよく理解できます。
わたしたちは、誰かにさわられられたり熱いものをさわったり棘が刺さったりするとすぐにわかります。接触や熱さ・冷たさ・痛みなどは皮膚を通して検知します。皮膚は、わたしたちの全身をおおっている重要な感覚器官です。このような皮膚感覚はどのようにな仕組みで生じるのでしょうか?
『ニュートン 2016年3月号』(ニュートンプレス)(注) ではシリーズ「感覚のしくみ」第5回(最終回)として皮膚感覚をとりあげています。
『ニュートン 2016年3月号』(ニュートンプレス)(注) ではシリーズ「感覚のしくみ」第5回(最終回)として皮膚感覚をとりあげています。

たとえば指先には、「メルケル細胞」と「マイスナー小体」というの2種類のセンサーがあります。メルケル細胞とは圧力に反応するセンサーであり、マイスナー小体は振動に反応するセンサーです。物をさわったときに圧力とともにわずかに振動が皮膚には生じます。その振動に皮膚は反応します。
メルケル細胞の表面には、電気をおびたイオンの通り道(イオンチャンネル)が複数あります。皮膚に圧力がかかるとイオンチャンネルがひらき、プラスの電気をおびたナトリウムイオンなどが細胞の中にながれこみます。そしてメルケル細胞に接続している「神経終末」にイオンがながれこみ電気信号が発生します。
その電気信号は「神経繊維」によって脊髄そして脳につたえられます。神経繊維いわば "電線" です。
そして脳で電気信号が処理されて手触りやさわりごこちが認知されます。
つまり皮膚感覚の「感じ」とは、皮膚ではなくて脳でひきおこされているのです。皮膚はセンサー、脳はプロセッサーであり、皮膚から情報がインプットされ、脳でプロセシングがすすむとかんがえるとわかりやすいでしょう(下図)。

つまり皮膚感覚の「感じ」とは、皮膚ではなくて脳でひきおこされているのです。皮膚はセンサー、脳はプロセッサーであり、皮膚から情報がインプットされ、脳でプロセシングがすすむとかんがえるとわかりやすいでしょう(下図)。

図 皮膚はセンサー、脳はプロセッサー
皮膚感覚には、 圧力や振動を感じとる「触覚」にくわえて、温度を感じとる「温冷覚」や組織の損傷などを感じとる「痛覚」などもあります。これらも同様な仕組みになっています。
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このような皮膚感覚はほかの感覚とくみあわさって認識がふかまります。
たとえば目をつぶって布などをさわるだけのときよりも、見ながらさわったほうが質感がわかりやすいです。視覚と触覚の間で情報交換をして認識しているのです。
たとえば目をつぶって布などをさわるだけのときよりも、見ながらさわったほうが質感がわかりやすいです。視覚と触覚の間で情報交換をして認識しているのです。
また手をこすりあわせたときの音を聞きながら実際に手をこすりあわせる実験をしたところ次の結果がえられました。
- 高音を強調した音を聞きながら手をこすりあわせる → 乾燥肌が感じられた
- 高音を弱めた音を聞きながら手をこすりあわせた → 湿った肌が感じられた
皮膚感覚と聴覚とはおたがいに影響しあっているわけです。
これらのことから、いくつもの感覚が複合されて認識がおこっていることがわかります。
これらのことから、いくつもの感覚が複合されて認識がおこっていることがわかります。
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『Newton』では5回にわたって「感覚のふしぎ」を連載していました。これらを見ればあきらかなように、わたしたち人間がもっている眼・耳・鼻・舌・皮膚はいずれも外部からの情報をうけるセンサーであり、脳はそれらの情報を処理するプロセッサーです。わたしたち人間は、外界(環境)から意識の内面に情報をインプットし、内面でプロセシングをすすめて認識したり判断したりしているということです。
人間を、情報処理をする存在であるととらえなおすことは、これからの情報化時代に非常に重要な意義をもってくるとわたしはかんがえています。
人間を、情報処理をする存在であるととらえなおすことは、これからの情報化時代に非常に重要な意義をもってくるとわたしはかんがえています。
▼ 注
「皮膚感覚のしくみ」『ニュートン 2016年3月号』ニュートンプレス、2016年3月7日
Newton(ニュートン) 2016年 03 月号 [雑誌]
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