国立科学博物館の日本館をみれば、日本の自然の多様性とその歴史や危機についてまなぶことができます。
成毛眞・折原守著『国立科学博物館のひみつ』(ブックマン社)(注1)は、国立科学博物館の日本館のガイドブックです。本書を読んでからあるいは本書を片手に日本館を見学すれば日本の自然についての理解が一層ふかまります。
目 次
第1章 成毛眞の科博日本館マニアックツアー
3階南翼 日本列島の素顔
3階エレベーター前 日本の鉱物
3階北翼 日本列島のおいたち
2階南翼 生き物たちの日本列島
2階北翼 日本人と自然
1階南翼 自然をみる技法
第2章 筑波研究施設 自然史標本棟潜入取材
陸生哺乳類剥製標本室
人類標本室
岩石・鉱物標本室
動物液浸標本室
第3章 対談 成毛眞 X 折原守
第4章 特別展アーカイブ
国立科学博物館には、日本館(休館)と地球館(新館)とがあり、本書は、日本館のみをとりあげています。地球館の方があたらしくて規模が大きいため注目されがちですが、本書を読めば日本館のすばらしさをあらためて見直すことができます。
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日本は南北にながく、海にかこまれ、四季にめぐまれ、地震や火山の多い列島です。日本列島の自然の最大の特色は多様性にみちあふれているということです。
たとえばおなじ島国であるイギリスとニュージーランドと日本とを比較してみると、大陸との位置関係や気候や面積などは類似していますが、総種数と固有種数は日本の方が圧倒的に多いです。日本は多様性の宝庫であるといえます。
このような日本は、かつてはユーラシア大陸の東の縁辺部でした。そこが大陸から切りはなされて海の方に移動してきて列島を形成したとかんがえられています。このような非常に特異な自然史が大きな多様性を生みだしたといえます。
しかしながら、土地の高度な開発や外来種のもちこみによりこの多様性に危機がせまっています。日本館では、トキやノリやコケ類などの絶滅危惧種を紹介しています。近年とくに問題になっているのは、外国から人為的に はこばれてきて野生化した外来生物が日本の固有生物を絶滅させてしまうことです。
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多様性のある日本列島では、比較的せまい範囲でたくさんの種類を見ることができます。簡単にいうと高密度で効率がよいということです。
一方、大陸へいくとその逆で、スケールが大きいために何事も大雑把で、大きなスケールの自然が帯状に分布しています。大陸では、非常に広大な地域を時間をかけて移動しないと多様な変化が見られません。簡単にいうと効率がわるいのです。
大陸とはちがい日本では自然の多様性を効率的に見ることができるので便利です。しかしミニチュア的自然がモザイク状に集合していて複雑でわかりにくいという側面もあります。
そこで国立科学博物館の日本館が役立ちます。日本館の中を1〜2時間かけてあるいてみれば日本列島の様子がよくわかります。是非一度いってみてください。
▼ 注1
成毛眞・折原守著『国立科学博物館のひみつ』ブックマン社、2015年7月25日
▼ 注2
国立科学博物館