読書は、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の一環としておこない、課題設定と情報処理とをセットにして実践するとよいです。


『知と思考を鍛えるための読書術』(週刊東洋経済eビジネス新書)は、多方面の専門家が読書術について自由に論じていて、現代的な本の読み方をかんがえる上で参考になります。それぞれの章にはおすすめの本が具体的に紹介されていて書籍ガイドとしてもつかえます。


 

日本では現在、年間約8万点もの出版物が出版されています。本をえらびだすのにも一苦労です。ひとつのその解決法は書評を参考にするこです。本書『知と思考を鍛えるための読書術』も役立ちます。書評や書籍案内のたぐいの記事や本は結構あります。書評をつかってイベントをおこなったという事例もあります。

本をえらびだしてせっかく読んでも読書の効率がわるい人をみかけることがあります。ボヤーッと理解した状態のままにしているのです。すこしぐらい間違えてもいいので「わたしの今の理解ではこういうことだ」とはっきりさせた方がいいです。そのためにはアウトプット(書きだし)をするようにします。アウトプットすることによって記憶も定着します。読書は、アウトプットとかならずセットでとりくんでいきたいものです。




そもそも何で本を読むのか。

欧米諸国の先進事例をおっていた時代はとうの昔におわっています。生徒や学生が知識を増やすのはいいとしても、すくなくとも社会人は、知識を得ることが目的ではなく、何らかの刺激をうけるために本を利用するというようでなければいけません。

あるいは あらたな発想をえる手がかりを本にもとめます。たとえば頭の中にあアイデアがある場合、それを形にするためには読書というインプットがいります。自分の発想を本からクリエートすることが大事でしょう。本を読むこと自体が目的化しては駄目な時代になりました。

そのための前提として必要なことは課題設定です。あなたが人生で本当にもとめているものは何か、それが課題になります。死ぬまでに何を知りたいのか、何をやりたいのか。そのことを真剣にかんがえて人生のテーマを見つけてほしい。

そして課題にもとづいて、広範な領域について本を通してまなぶことは、従来のような教養をえることではなく、実践的な思考力をきたえることにつながります。現代においては、問題の複合化や領域ごとの相互連鎖がすすみ、ひとつの専門分野だけでは解決できない課題が増加してきています。多様な思考方法を身につけて「何が本質的な問題なのか」を提示できるようになることが大事です。




情報処理の観点から読書をとらえなおすと、本を読むことは自分の内面に情報をインプットすることです。そして何かを書き出すということは情報をアウトプットすることです。インプットとアウトプットの間にはプロセシングが心の中でおこります。理解したり、記憶したり、想像したり、発想したりすることなどです(下図)。
 

160131 読書
図 情報処理の一環として読書をする
 

現代の読書術は、欧米の事例をおいかけたり知識をつめこむのではなく、発想の手がかりをえるクリエイティブな読書でなければならないということは、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の一環として読書をするということです。

ポイントは、本を読んだらアウトプットをかならずするというところにあります。せっかく本を読んでもそのままにしておくとボヤーッとした情報が心の中で堂々巡りをし、情報の流れが生じません。情報はアウトプットしてどんどん流していかなければなりません。情報の流れをおこすことが大事なことは何事についてもいえます。たとえばテレビをボーッと見ているのもよくありません。情報をインプットしたらからなずアウトプットをするようにします。

そもそも何かをクリエートするということはよくできたアウトプットをするということです。

そして課題設定が重要です。課題設定をして読書をすればプロセシングがおのずとすすみます。ただ単に必要にせまられて読んでいるだけだとプロセシングがすすみません。課題設定と情報処理をセットにして実践していくことが大切でしょう。


▼ 引用文献
『知と思考を鍛えるための読書術』(週刊東洋経済eビジネス新書)東洋経済新報社、2014年1月11日
知と思考を鍛えるための読書術―週刊東洋経済eビジネス新書No.53