沖縄美ら海水族館(入り口)
垂直軸を想定して、垂直方向のうつりかわりに注目すると海の生き物たちがよく整理されて見えてきます。
沖縄・海洋博公園にある沖縄美ら海水族館(ちゅらうみすいぞくかん、注1)は、世界的にみてもトップクラスのよくできた水族館です。とても大きな水族館であり、4階の入り口から3階→2階→1階へと、浅海から深海へもぐっていく構造になっているのが特色です。
美ら海水族館の見取り図
各階のテーマはつぎのとおりです。
- 3階:サンゴ礁への旅
- 2階:黒潮への旅
- 1階:深海への旅
■ 3階「サンゴ礁への旅」
熱帯魚の海:太陽光がふりそそぐ浅瀬から薄暗い洞窟まで「熱帯魚の海」水槽はすべてつながっていて、そこにすむ魚たちを、海のなかにふかくもぐっていくいくように順番に見ることができます。
熱帯魚の海
■ 2階「黒潮への旅」
深さ10m、幅35m、奥行き27m、容量7500m³の大水槽「黒潮の海」が圧巻です。ジンベイザメ、ナンヨウマンタ、トラフザメ、マダライルカなど、約70種の海洋生物がおよいでいます。
黒潮の海
大きな魚はジンベイザメ。その名は「ジンタ」。
この大水槽を水面から自由に観覧できる人気の「黒潮探検」コースもあります。スタッフによる解説もおこなっています。いろいろ質問してみるとよいでしょう。
大水槽の上から見る
■ 1階:深海への旅
はなやかなサンゴ礁や大きく流れる黒潮の海とはちがう静かな世界がひろがっています。深海には不思議な形態をもつ生き物がおおく見られます。あまり紹介されることのなかった深海の多様な生き物たち約70種が展示されています。
オキナワクルマダイ、マダラハナダイ、アオダイ、アカサンゴ、
ムラサキヌタウナギ、オオグソクムシ、ドウケツエビ、フクロウニ、
タカアシガニ、イモリザメ、ハマダイ、ノコギリザメ、など。
深層の海
世界の海洋はその大部分が水深200mを超える深海でしめられています。そこはまだまだ謎につつまれた世界であり、その神秘性が印象にのこります。
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沖縄美ら海水族館は、海をもぐっていく体験ができるところに大きな特色があります。海の生き物の垂直分布、海の垂直構造がよくわかります。
海の生物や海の世界を理解しようしとおもっても、海はひろすぎて何だかよくわからないといった感じがします。そこでおもいきって垂直方向のみに注目してみます。大きな海の空間に垂直の軸(浅深の軸)を1本いれてみます。その軸を基準にしてさまざまな生物を整理してみるのです。
このように垂直構造に注目すると、平面的に見ていたときにはわからなかったことがよく見えてきます。
図 垂直軸を想定して垂直方向に注目する
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浅瀬から浅海・中層・深海へと、美ら海水族館の海の世界をもぐっていくと、生き物たちは見事にうつりかわっていくではないですか。生き物たちは垂直方向で「すみわけ」をしていたのです。
自然学者・今西錦司はかつて、「生物は、地球上ですみわけて共存し、またすみわけるように進化してきた」という「すみわけ」説を発想しました(注1)。
美ら海水族館を体験すると、この「すみわけ」説を検証することができます。浅瀬・浅海・中層・深海というそれぞれの場所においてそれぞれの生物がくらしています。生物の空間配置が海にはあります。それぞれの生物は「居場所」をそれぞれにもっています。「居場所」があるというところが重要です。
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このような垂直軸をつかう方法は応用が可能です。
多様な情報がたくさんあってどうも整理がつかないというときに、1本の縦軸を想定してみて、その軸を基準にして多様な情報を配列してみると整理がつくことがよくあります。多様で複雑な情報が空間配置できるのです。同時に、情報の多様性も理解できてくるでしょう。
▼ 注1
沖縄美ら海水族館
▼ 注2
今西錦司著『生物の世界』講談社、1972年1月15日
生物の世界 (講談社文庫)
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