地球環境問題はとても複雑ですが、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムのモデルでとらえるとわかりやすいです。


西岡秀三・宮崎忠國・村野健太郎著『地球環境がわかる』(技術評論社)は地球環境問題の一般むけ入門書です。多数のイラストをつかってわかりやすく解説しています。


目 次
第2章 エネルギー・物質の循環
第3章 地球温暖化
第4章 自然環境の改変と汚染
第5章 自然環境と生物多様性
第6章 都市化と環境問題
第7章 環境をよくするためのしくみと行動


IMG_3771
図1 環境問題の構造


本書の12-13ページに「環境問題の構造」という図がでていてこれが本書の全体像をあらわしています(図1)。




わたしはこれをさらに簡略化して下図のようにモデルをえがいてみました(図2)。

160119 環境問題
図2 物質・エネルギーの循環システムのモデル


ある地域においてその中心には人間社会が存在し、人間社会は地域の主体として機能しています。そしてその周辺域には環境が存在します。環境は緑色でしめしました。

地域では、人間社会と環境とを通して物質・エネルギーの流れと循環がたえずおこっています。物質・エネルギーの流れと循環は矢印でしめしました。


 

■ インプット
物質・エネルギーが人間社会に環境から入ってくるのがインプットです。いわゆる自然からの恩恵というものです。

■ プロセシング
人間は自然からの恩恵を利用して、食料を食べ、エネルギーを消費し、さまざまなあたしい物質を生産します。環境から入ってきたエネルギー・物質を処理する過程です。

■ アウトプット
人間社会にとって不要な物質・エネルギーを環境へ排出することです。




環境は自浄作用や調整作用をもっているので、環境へアウトプットされた物質・エネルギーは環境における循環の中に本来ならば吸収されていきます。

しかしながら現代では環境問題が発生しています。環境問題とは、人間活動が拡大し、環境への圧力がとても強力になったためひきおこされたと説明されています。これはつまりアウトプットが巨大化しすぎて、環境の自浄作用や調整作用がおいつかなくなったということです。その結果、次のような自然環境の汚染がすすんでいます。
 
オゾン層破壊、大気汚染、酸性雨、水質汚濁、海洋汚染、土壌汚染、森林破壊、砂漠化など。その他にも、生物多様性の危機、外来種問題、地球温暖化などが生じています。

そして図2の循環システムにおいてあらたなインプットをするときに、人間社会の中に汚染物質も入ってくるようになってしまいました。環境からの物質・エネルギーの過剰な摂取つまり過度なインプットも問題になっています。

あるいはプロセシングがうまく機能しなくなりました。廃棄物処理問題などはその最たるものです。廃棄物を環境にアウトプットするにもアウトプットできず、人間社会の中(あるいはそば)においてあるという問題も生じています。




このように〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムは現代文明をうごかしている重要なシステムであるとかんがえることができます。このシステムにおいて、エネルギー・物質の流れに情報をくわえてもよいです。
 
このようにみてくると、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉がうまくいかずバランスがくずれるとさまざまな問題がおこってくるということがわかります。
 
したがって問題を解決するためには、〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をあらためてとらえなおし改善していかなければなりません。

このように〈インプット→プロセシング→アウトプット〉はとても重要な概念だといえます。たとえばニュースを見たときにさまざまな情報を、インプット・プロセシング・アウトプットのそれぞれに整理してとらえなおすだけでも環境問題に関する理解は一気にすすむでしょう。



▼ 関連記事
地球環境問題と機械文明(1) -『地球環境がわかる』-

▼ 引用文献
西岡秀三・宮崎忠國・村野健太郎著『地球環境がわかる』(改訂新版)技術評論社、2015年7月6日
[改訂新版] 地球環境がわかる