〈インプット→プロセシング→アウトプット〉のモデルをえがくと冷帯地域の様子を端的にとらえることができます。『気候帯でみる! 自然環境〈4〉冷帯・高山気候』(少年写真新聞社)の前半では冷帯気候についてとりあつかっています。
冷帯は、1年のなかの気温差が大きく、冬の寒さがきびしい地域です。ケッペンの気候区分では、「もっともあたたかい月の平均気温が10℃以上、もっともさむい月の平均気温がマイナス3℃未満」とされています。より寒冷な気候である寒帯よりもややあたたかい気候であることから「亜寒帯」とよばれることもあります。
北緯40度以上の地域に集中し、ロシアやカナダは国土の大部分、日本では北海道が冷帯にふくまれます。
北緯40度以上の地域に集中し、ロシアやカナダは国土の大部分、日本では北海道が冷帯にふくまれます。
目 次冷帯の気候区分冷帯の気象災害冷帯の植物冷帯の動物冷帯の産業冷帯の都市日本 札幌のくらしロシア イルクーツクのくらし

■ 冷帯の気候区分
冷帯は降水量の季節変化によって次の2つの気候に区分されます。
- 冷帯湿潤気候:あまり量は多くはないものの1年を通して降水があります。
- 冷帯冬季少雨気候:夏に雨が多く、冬は雨・雪の量が少なく乾燥します。
■ 気温の年較差
1年のうちのもっともあたたかい月(最暖月)の平均気温と、もっとも寒い月(最寒月)の平均気温の差(年較差)が大きく、熱帯の年較差は2〜5℃ほどであるのに対し、冷帯では30℃以上になる地域があります。
■ 冷帯の気象災害
次のような気象災害があります。
次のような気象災害があります。
- 吹雪
- なだれ
- 雪解け水による災害(土石流など)
■ 冷帯の植物
「タイガ」とよばれる針葉樹林が特徴的です。代表的な針葉樹としてはエゾマツやモミがあります。
■ 冷帯の動物
- 冬眠をする哺乳類:クマ型冬眠、ヤマネ型冬眠、シマリス型冬眠
- 針葉樹林の動物:キンメフクロウ、ホシガラス、アメリカテン、ユキウサギ、ヘラジカ(ムース)、アムールトラ、カワヒメマス、その他
■ 冷帯の産業
- 土壌と農業:チェルノーゼム(ロシア語で黒い土)やプレーリー土の地域では春小麦の生産がさかんです。
- 林業:針葉樹林(タイガ)がひろがるカナダやロシアでは、エゾマツ・カラマツ・トウヒ・ドドマツなどの木材を輸出したり、木材加工・製紙業がさかんです。
- 酪農:ウシやヒツジ・ヤギなどを飼育して乳やチーズ・バターなどの乳製品を生産する農業がいとなまれています。
- 狩猟:農業や酪農ができない地域では伝統的に狩猟がおこなわれてきました。
■ 冷帯の都市と人々のくらし
以下が紹介されています。
以下が紹介されています。
- 日本、札幌
- ロシア、イルクーツク
イルクーツクは、シベリア南部に位置するバイカル湖ちかくの都市です。セントラル・ヒーティングがそなわった集合住宅に多くの人々が住んでいます。ながく寒い冬にそなえて次のような保存食をつくっています。
- バイカル湖に生息する魚、オーリムのくんせい
- 野菜やキノコの酢漬け
- ジャム
- ヴァレニエ(果物の砂糖煮)
*
以上のように、冷帯地域でくらす人々は、その地域独自の自然環境(冷帯気候)をいかして独自の産業を発達させてきました(下図)。

図 冷帯地域のモデル
ひとつの地域は、このような〈インプット→プロセシング→アウトプット〉システムにそもそもなっています。
このような〈インプット→プロセシング→アウトプット〉の視点をもつと、地理学的な単なる記載をのりこえて、その地域を動的にとらえることができます。
- 人々は何をインプットしているのか?(食料、物質、エネルギー、情報・・・。気象災害のような不利益なインプットもあります。)
- 人々は何をプロセシングしているのか?(保存食をつくる、食料を消化する、エネルギーをつかう・・・)
- 人々は何をアウトプットしているのか?(不要な物質、開拓、開発、自然破壊、情報発信・・・)
たとえば外国を旅行したときにこうした問題意識をもって旅先の地域をじっくり見てみると、自分や自分たちが〈インプット→プロセシング→アウトプット〉をおこなうときに参考になるよい事例が見つかるかもしれません。
▼ 引用文献
こどもくらぶ著・高橋日出男監修『気候帯でみる! 自然環境〈4〉冷帯・高山気候』少年写真新聞社、2013年2月22日
気候帯でみる!自然環境〈4〉冷帯・高山気候 (気候帯でみる! 自然環境)
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