文化発展に関する仮説を提唱している本です。川喜田二郎がしてきた仕事を時系列でたどりながら、仮説を形成していく過程をよみとることができます。
KJ法にとりくんだことがことがある方で、川喜田の半生の概要をてっとりばやく知りたい方にもおすすめできる本です。
川喜田は、パターンとして生きざまとして確立した文明としてつぎの7つの文明をあげています。
中国文明、ヒンドゥー文明、チベット文明、イスラーム文明、ビザンチン文明、ラテン文明、西欧文明があります。これら7つの文明は気候帯とほぼ一致します。また、独自の大宗教(高等宗教)と結びついているのが特色です。
こうして、まず、環境と人間と文明に関して大観し、地球の大局をつかんでいます。
これを踏まえて、つぎに、フィールドワークとアクションリサーチに入ります。具体的な地域としては、日本の東北地方(北上山地)とヒマラヤ山村を選択しています。ここで、KJ法をつかって情報収集とそのまとめをおこない、地域性について理解していきます。
そして最後に、文明と地域の両者を踏まえて、「文化発展の3段階2コース説」という仮説を提唱しています。これは、文化は、素朴から文明へと発展するものであり、「素朴→亜文明→文明」と「素朴→重層文化→文明」という2コースがあるとする説です。
詳細につきましては本書をご覧いただきたいとおもいますが、ここでは、仮説形成には3つのステップがあることを協調しておきたいとおもいます。
(1)グローバルにとらえる
(2)地域を研究する
(3)仮説を立てる
(1)では、地球を大観し大局をつかみます。これが、仮説形成のための前提になります。
(2)では、具体的な地域を個別に調査・研究し、データをあつめ、現場の事実をおさえます。
(3)前提と事実を踏まえ、仮説を発想します。
このように、前提→事実→仮説という3つのステップを踏んで仮説は形成されます。
ひとつのおなじ前提に立っていても事実がちがえば仮説もことなります。また、事実がおなじでも前提がことなれば仮説もことなってきます。たとえは、おなじ事実を目の前にしても、世界観(前提)がことなるために、仮説もことなるというのはよくあることです。
他人の仮説をみるときも、自分が仮説をたてるときも、前提と事実をしっかりおさえなければなりません。
文献:川喜田二郎著『環境と人間と文明と』古今書院、1999年6月3日
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