平衡感覚は耳と脳とで生じています。『Newton』2016年 2 月号では、シリーズ「感覚のふしぎ 第4回」として- 「聴覚と平衡感覚のしくみ」を掲載しています。今回は平衡感覚についてみてみましょう。
 

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ヒトの耳は、音だけでなく頭の動きや傾きもとらえることができます。頭の動きや傾きをとらえるときにひきおこされる感覚を平衡感覚といいます。

頭の加速運動と傾きは、内耳の膜迷路の「卵形嚢」(らんけいのう)と「球形嚢」(きゅうけいのう)にある「有毛細胞」によってとらえられます。また頭の回転運動は、内耳の「半規管」にある有毛細胞によってとらえられます。

この有毛細胞の感覚毛がかたむけられると感覚毛のチャネルがひらき、カリウムイオンが有毛細胞に流入し、電気的な信号が発生します。

この電気信号が脳につたえられ処理されて加速運動や傾きや回転運動が感じられます。これが、乗り物などが加速運動をしたり揺れたり傾いたり回転したりすることを認知できるしくみです。

このように平衡感覚は耳と脳とで生じおり、耳はセンサー、脳はプロセッサーととらえるとわかりやすいでしょう。

このしくみを理解し応用した例として乗り物酔いの薬があります。乗り物酔いは、平衡感覚の情報と視覚の情報が一致せずに脳が混乱したときにおこります。脳の混乱とは情報処理のエラーといってもよいでしょう。そこで乗り物酔いの予防薬には、平衡感覚と視覚の不一致による脳の混乱をおさえる成分をいれているそうです。
 


▼ 引用文献
「聴覚と平衡感覚のしくみ」Newton, 2016年2月号, 2016年2月7日発行
Newton(ニュートン) 2016年 02 月号 [雑誌]

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