わたしたちの眼(眼球)は、凸レンズ(角膜、瞳孔と虹彩、水晶体)と網膜とからなっています。
眼にとどいた光は「角膜」にまず入り屈折します。角膜は、白目とつながっているかたいレンズです。
その光はつぎに、白目の内側の層にある「黒目(瞳孔と虹彩)」をとおりぬけます。
そして光は、さらに奥にある「水晶体」に入ります。水晶体は、その厚さを自動的に変えることで眼に入る光の屈折の度合いを変えてピントを調整しています。
さらにその奥には、光(正確には光子)をとらえるセンサーである「網膜」があります。網膜は、眼球のもっとも内側の面にはりつくようにひろがった層です。その層のもっとも奥にある「視細胞」で光子はとらえられます。視細胞の「外節」(がいせつ)という部分には光子を吸収する物質(視物質)があるのです。
光子が視物質にとどくと視物質全体の構造がわずかに変わり、この変化がきっかけとなって視細胞に電圧の変化を生じさせます。その電圧の変化は神経節細胞につたわり、神経節細胞が脳へ電気信号を発信します。
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電気信号は、脳の後方にある領域「一次視覚野」にまずおくられ処理されます。その後、「二次視覚野」、「三次視覚野」などにおくられます。
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以上から、わたしたちの視覚系にはつぎの2つの場面があることがわかりました。
(1)左右の眼球が光子をうけて電気信号を発する場面
(2)電気信号を脳が処理する場面
第1の場面はインプット、第2の場面はプロセシングといってもよいでしょう。これが視覚系の情報処理システムです。わたしたちが見ていた世界(3Dイメージ)はこのような2つの場面によって生じていたのです(下図)。
図 光子をうけ、3Dイメージができる
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本書では、脳がプロセシングをおこなっている証拠として「盲点」について述べています。本書中の図をつかって実際に盲点の実験をすることができます。周辺の信号で盲点を穴埋めする処理が脳でなされているとかんがえられます。
また眼球のレンズをとおってきた光が網膜に到達したときには、虫眼鏡でとおくを見るときとおなじように上下さかさまになっています。それをそのまま知覚するのであれば、世界はさかさまに見えるはずですがそうはなっていないのは、脳が情報処理をしているからです。
以上から眼はセンサー、脳はプロセッサーととらえるとわかりやすいでしょう。
本書に掲載されている電子顕微鏡で見た網膜と視細胞の写真は一見の価値があります。その他のイラストも実にわかりやすいです。視覚系の情報処理に興味のある方におすすめします。
▼ 引用文献
『Newton』(2015年 11 月号)ニュートンプレス、2015年11月7日発行
Newton(ニュートン) 2015年 11 月号 [雑誌]
▼ 引用文献
『Newton』(2015年 11 月号)ニュートンプレス、2015年11月7日発行
Newton(ニュートン) 2015年 11 月号 [雑誌]
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