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ワイン展 - ブドウから生まれた奇跡 -



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ブドウをつくる
(交差法で立体視ができます)
 


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ワイナリー
(交差法で立体視ができます)


ふるい酒器などの発掘物を見ているとワインの歴史とその時代的背景が理解できます。

国立科学博物館で開催されている「ワイン展 - ブドウから生まれた奇跡 -」の第2展示室(Zone 2)では、世界中にひろがったワインの歴史をふるい酒器などの貴重な資料をつかってたどっています。

ワインの歴史はコーカサス地方ではじまります。紀元前6000年ごろの新石器時代、南コーカサスのジョージア(旧グルジア)のあたりで偶然がかさなってワインが誕生しました。新石器時代に土器が発明されてまもなく、器の中に保存しておいた野生のブドウが偶然にも発酵がすすんでワインにちかい状態になったとかんがえられています。

その後、自宅でワインをつくって飲む自家消費型のワインづくりがひろまりました。


新石器時代にひきつづく銅石器時代(前5000年ごろ)になると人々があつまる場所でワインの需要が高まり、自分たちのためだけでなく、ほかの人たちのためにもワインを生産するようになります。

ブドウ栽培もおこなわれるようなりました。前4000年ごろには、ワインをいれてはこぶ酒器が登場します。ワインの取引所もできました。

ワインづくりの本格化は都市の出現をあらわしています。

南メソポタミアでは約5000年前、都市は国家的な組織を持つ都市国家へ成長、王を中心とした支配体制が確立し、祭礼場面でワインが重用されました。


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前1000年紀になると、西アジアでは、広大な領域を一つの王朝が支配する帝国が出現しました。アケメネス朝ペルシアなどです。飲酒器は豪華絢爛になり青銅・銀・ガラスを素材とした器が登場しました。国家にとって重要な飲料にワインはなりました。

一方、ローマ帝国ではあらゆる階層でワインが飲まれるようになりました。上流階級は高級ワイン、下流階級や兵士は「ポスカ」(水をまぜたヴィネガーにちかい酸味のあるワイン)、奴隷は「ロラ」(ブドウのしぼりかすかを水にひたしてさらにしぼったもの)を飲んでいました。古代ローマでは、消費者の地位がワインの品質にも反映されていたのです。


このように新石器時代に偶然できたワインは、都市の出現、都市の成長、都市国家の誕生、都市国家の競合、帝国の時代へという歴史的背景のものとでその "文化" を発展させてきました。

ここに、〈石器時代〉→〈都市国家の時代〉→〈帝国の時代〉という時代の大きな流れをよみとることができます(図1)。ワインの酒器の変遷など、具体的な発掘物を実際に見ながら理解することが大切です。現存するさまざまな物は歴史を物語っているわけです。
 
 

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図1 世界史モデル



それぞれの物は、それぞれの時代的背景のもとでつくられつかわれたわけですから、それぞれの物はそれぞれの時代を反映しています。発掘物から時代的背景を想像し、一方で時代的背景のもとで発掘物をとらえなおすことがで重要です(図2)。


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図2 物を見て時代的背景を想像し、時代のなかで物をとらえなおす




会場には、飲用可能なシャンパーニュとしては世界で2番目にふるい古酒も展示されていました。2010年、バルト海の海底にしずむ難破船から見つかりました。


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世界で2番目にふるい古酒
(クロス法で立体視ができます)


 
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▼ ワイン展 - ブドウから生まれた奇跡 -(2016年2月21日まで)

参考文献:『ワイン展 - ブドウから生まれた奇跡 -』(ガイドブック)、読売新聞社発行、2015l年

▼ 会場



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