非常にわかりやすいニュース解説者として知られている、ジャーナリストの池上彰さんがまなぶたのしさについてかたっています。わかりやすさとは何か、わかりやすくつたえるためにはどうすればよいか、池上さんからまなぶことはたくさんあります。

本書は、NHKを辞めて大学でおしえることになった経緯を中軸にして話をすすめています。

わたしがまず印象にのこったのは「絵を描けるように話す」ということです。池上さんはのべています。
ビジュアルと言葉の両輪で説明しようと努めてきました。

また、紙の新聞の「ノイズ」で教養をふかめることものべています。「ノイズ」とは、自分の関心以外のニュースや情報のことです。
紙の新聞なら、自分の関心以外の記事も自然に目に入ってきます。目に入った隣の記事までつい読んでしまうことで、知識や関心が広がっていきます。

これは、大きな視野、大きな空間で情報をとらえるということであり、自分がもとめている情報だけではなく、その周辺や背景にある情報も同時に取得するといことです。これは、情報を取得(インプット)するときに重要なことです。中心視野だけではなく周辺視野もフルにつかって、その空間にある情報すべてをまるごとインプットしてしまうのがよいです。そして、本来目的としていた情報も、その周辺や背後の空間の中に位置づけてとらえ、記憶していけばよいのです。

また、池上さんは「リアル書店の棚で勉強できる」ことものべています。
何かについて勉強したい、知りたいとおもったら、まずはターミナルにある大規模書店に足を運び、そのテーマについてどんな本があるのかを見に行きます。そこでイメージをつかんで、自分にあった本を選べば良いのです。

以上のように本書のキーワードは空間とイメージです。新聞の紙面もリアル書店も空間です。そして「イメージを描く」となるわけです。このように、あるテーマについて何かをまなぶとき、空間を活用してイメージをえがくことが重要です。心の中に情報をインプットしたり、イメージをえがいたりする空間は大きければ大きいほど情報処理は加速され、その効率があがります。パソコンやタブレットの二次元のせまい画面(平面)や、ネットでえられた断片的な情報だけでは情報処理の効率はあがりません。

「アナログ人間のオヤジ」と自称する池上さんのアドバイスを参考にしたいものです。


文献: 池上彰著『学び続ける力』(講談社現代新書)講談社、2013年1月20日