帝国や文明が発展していく過程でいわゆる高等宗教が大きな役割をはたしたことを知ることは重要なことです。
大英博物館展(100のモノが語る世界の歴史)では、No.025として「金製のゾロアスター教徒像」(紀元前500−前400年、タジキスタンとアフガニスタンの国境)が展示されています。キュロス大王(在位前559-全529年)によって建設されたペルシャ帝国はゾロアスター教を国教としました。
ゾロアスター教は最古の高等宗教ともよばれ、ニーチェの『ツァラツストラはかく語りき』によっても現代では知られています。ツァラツストラとはゾロアスターのドイツ語名です。
ペルシャ帝国がきずきあげたペルシャ文明にとってこのゾロアスター教は大きな役割をはたしました。
このような観点に立つと、その後の前近代的な本格文明の数々についてもいわゆる高等宗教が大きな役割を同様にはたしたことが類推できます。たとえば次のような文明と宗教との対応関係がみとめられます。
- ペルシャ文明:ゾロアスター教
- 中国文明:儒教
- ヨーロッパ文明:キリスト教
- ヒンドゥー文明:ヒンドゥー教
- チベット文明:チベット仏教
- イスラム文明:イスラム教
このようなことを読みとることは、紛争か共存かといった現代社会の大問題をかんがえるうえで避けては通れないことだとおもいます。
「大英博物館展」(神戸市立博物館)、2016年1月11日までです。
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「大英博物館展」(神戸市立博物館)、2016年1月11日までです。
▼ 注
「大英博物館展 ―100のモノが語る世界の歴史」特設サイト神戸市立博物館(2015年9月20日〜2016年1月11日)
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▼ 参考文献
『大英博物館展 - 100のモノが語る世界の歴史』筑摩書房、2015年3月25日
本書は展覧会場でも買えますが、一般書店でも販売しています。