情報をインプットするときには総合的に丸ごとインプットした方がプロセシンがすすみます。

『Newton』2016年1月号(注1)では「臭覚と味覚のしくみ」について解説しています。ここでは、臭覚と味覚のそれぞれの仕組みについて分析的に説明していますが、一方で臭覚・味覚・触覚・視覚・記憶などの情報が総合的にくみあわされておいしさや風味を脳が判断しているとものべています。

大脳の前頭野では、臭覚・味覚・触覚・温度感覚が統合されて「風味」を認識する。

大脳の二次味覚野では、臭覚・味覚・触覚の情報が組み合わされてたとえば私たちが経験する「焼肉の味」が形成される。

私たちが普段料理を味わうとき、実は臭覚の影響も大きく受けているのだ。試しに、鼻をつまんでお茶やジュースを飲んでみると、かなり単純な味に感じられるはずである。

あざやかな色のキノコを“毒々しい”と感じることがあるように、見た目の印象もおいしさにかかわっている。どんな大好物の料理でも、もし水色だったら食べたくなくなってしまうだろう。

臭覚と味覚に加えて記憶にもたよって、安全で栄養が多いかどうかを脳は判断している。


このように臭覚・味覚・触覚・温度感覚・視覚などによりインプットされた情報は単独でつかわれるのではなく記憶もあわさって総合されて認識にいたるのです。(下図)。

151208 感覚器
図 各感覚器官からの情報は総合されて認識にいたる


同様なことは聴覚についてもいえるでしょう。

わたしは、クラシック音楽がすきでコンサートホールによくいきます。ホールできくライブ演奏は本当に感動的で印象にのこります。

ライブが感動的で印象にのこりやすいのは音楽が耳できこえるだけでなく、楽器が発する空気振動もつたわってくるからです。また床からも振動がつたわってきます。コンサートホールでは、耳で音波を感じながら空気振動や床振動を皮膚で体で感じることができます。つまり、聴覚・皮膚感覚・体性感覚などが総合されて音楽を味わうことができるのです(注2)。

こうして音波・空気振動・床振動などのすべての波動がホールの空間全体で共鳴して圧倒的な効果が生じるのです。ここにはイヤホンで音楽をきくのとはまったくちがう世界がひろがっています。


このように、情報のインプットとプロセシングについては、その仕組みを知るために各感覚器官をとりあげて分析的に理解することも重要ですが、インプットとプロセシングが実際の生活のなかでは分析的にではなく総合的におこっていることを知ることも大切です。

したがって情報をインプットするときには、わたしたちがもっているすべての感覚を大きくひらいた方がよく、その方がプロセシングもすすみやすいといえるでしょう。


▼ 注1:引用文献
『Newton』(2016年1月号)、ニュートンプレス、2016年1月7日
Newton(ニュートン) 2016年 01 月号 [雑誌]

▼ 注2
指揮者や演奏者の体のうごきをが見えるという視覚効果もくわわって印象がよりつよくなります。

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総合的に丸ごと情報をインプットする


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