料理を食べておいしいと感じることは、食べ物を舌がうける場面と脳が味を認識する場面の2つの場面があるということから理解できます。
『Newton』2016年1月号(注1)では「臭覚と味覚のしくみ」について解説しています。今回は味覚についてみてみましょう。
わたしたちは焼肉を食べたとき本当においしいと感じます。一方で変な物が口に入ってきたときは嫌な味を感じすぐにはきだします。あるいは料理をつくっていて味見をして「いつもの味になった」とわかります。このような味覚はどのようにして生じるのでしょうか?
口のなかに食べ物が入ってくると舌などにある「味細胞」(注2)で食べ物の分子が感知されます。
味細胞が味物質をうけると、その情報が味細胞の内部で電気信号に変換されます。
その電気信号は、味覚神経によって脳の下部にある「延髄」の「弧束核」という部分につたわり、ここで中継されて電気信号は大脳におくられます。
たとえば大脳皮質の二次味覚野につたわると匂いや食感の情報と統合されて味が認識されます。あるいは扁桃体では、味の好き嫌いの判断がなされます。海馬では、記憶をもとに何の味かが認識されます。
基本的には、栄養になるものはおいしいと認識し、有害なものはまずいと認識し、消化できずに栄養にならないものは味は感じません。
ただし大脳には「学習」という機能があります。苦味や酸味は「嫌な味」で本来はあって、それは「毒」や「腐敗物」のサインですが、グレープフルーツの酸味や苦味やコーヒーの苦味が好きだという人は多いです。これらの味を「おいしい」と感じるのはそれらが安全な食べ物であり、体によい作用をする物だと大脳が「学習」した結果なのです。
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このように味覚系には、舌のはたらきと脳のはたらきという2つの機能があり、食べ物をうけとる場面と味を認識する場面、インプットの場面とプロセシングの場面という2つの場面があることがわかります。(下図)。食べ物の分子が舌にとどいているのであって、味情報そのものが舌で認識されているのではないことに気がつくことが大事でしょう。
図 味覚系の情報処理の仕組み
したがってもし、味覚を強化しようとおもったら舌や口をきれいにするだけでなく認識能力も強化しなければならないということになります。インプット能力だけでなくプロセシング能力も訓練しなければならないということでしょう。
▼ 注1:引用文献
『Newton』(2016年1月号)、ニュートンプレス、2016年1月7日
Newton(ニュートン) 2016年 01 月号 [雑誌]
▼ 注2
「味細胞」は、数十個あつまって「味蕾」(みらい)という構造をつくっています。味蕾は、舌の表面のほか、上あごの奥の「軟口蓋」という部分や喉の部分にも分布しています。
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