自然をシステムとしてとらえると自然の構成と進化が理解できます。
F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(NHK出版)は、「自然・人類・文明」という壮大なテーマについて西洋の視点と東洋の視点から対論の形式で論じています。
目 次I 自然II 人類III 文明附論1 人間的価値の三つの起源附論2 進化と突然変異附論3 経済発展と日本文化
この世界というものは秩序のある世界である。(今西錦司)
地球上のすべての生物に社会をみとめることができます。生物的自然というのはそうした社会のつみかさなりであり、全体でひとつの「生物全体社会」、一つのまとまりのある構築物をつくっています。いいかえるならば生物的自然は一つのシステムであるということです。
この生物的自然は個体と種とから構成され、これら二つはいずれも実在して世界の構造に参加しています。
西洋人は、種の起源や進化をかんがえるときに、個体がもとになってそれから種というものができていくという見方をしますが、実際にはそうではなくて個体と種とは最初から同時に成立していて、どちらが先でもどちらが後でもありません。個体と種とは二にして一のものです。
また西洋人は、生存競争と適者生存つまり自然淘汰によって新種ができるとかんがえますが、種と種(種の社会と種の社会)とはおたがいに棲み分けていて、ほかのものの縄張りをおかしません。生物の進化は自然淘汰によっておこるのではなくて、進化とは変わるべくして変わるものであり、ひとつの歴史であるととらえることができます。進化は要因論で割りきれるものではありません。
本書は、1978年に京都でおこなわれた対論を収録したものです。西洋人のかんがえ方と比較しながら今西錦司あるいは東洋のかんがえ方を理解できる好著です。
今西錦司は「自然の進化は遺伝子や遺伝学だけで解けるようなものではない」と主張し、生物の行動をもっと追跡しろと指導しています。つまりフィールドワークをするようにということです。
▼ 引用文献
F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(NHKブックス)NHK出版、2014年11月25日
自然・人類・文明 (NHKブックス No.1224)
自然・人類・文明 (NHKブックス No.1224)
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