古今東西の地図の歴史をみると、空間あるいは地球の認識をどのように人類が拡大してきたかがわかります。

ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 - 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』(柊風舎)は、先史時代の岩に刻まれた最古の地図から今日のデジタルマップまで古今東西の地図をあつめた地図の図鑑です。

地図は、文字の発明以前から人間社会にかかせない情報の伝達や記録の手段でした。アボリジニの砂絵、イスラーム世界の天文学的な地図、中世ヨーロッパの絵画のように美しい地図、戦争中の征服地図や戦略図、そして今日のデジタル地図にいたるまで、時代をうつしだすさまざまな地図を多数の図版とともにわかりやすく解説しています。

目 次
第1部 序
 1 地図のはじまり
 2 最古の地図

第2部 古代
 3 古代世界
 4 古典時代の地図

第3部 中世
 5 中世ヨーロッパの地図
 6 イスラームの地図
 7 中国と極東

第4部 探検時代のはじまり
 8 新世界における地図学の伝統
 9 新世界の地図
 10 ヨーロッパのルネサンス時代の地図
 11 国家の地図
 12 地図帳の作製者たち

第5部 植民地時代の地図製作
 13 大英帝国の地図製作
 14 地図作製をを鼓舞する啓蒙運動
 15 新国家の地図化
 16 地図学との出会い
 17 万国共通の地図化

第6部 現代世界の地図化
 18 主題図
 19 地図と権力
 20 現代社会の地図学


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最古の地図は岩にきざんだ地図でした。

実用のための地図づくりは、農業革命を人類がおこしたころからはじまりました。それは文明のはじまりでもありました。地図は、農地や灌漑システムの管理のために重要な道具であり、土地を統制することに役立ちました。

やがて帝国が台頭してくるとともに測量技術が発達し、帝国を管理するために地図は不可欠なものとなりました。

大航海時代になると、新大陸の探検と発見においても地図は重要な役割を演じました。地球上の空白地域を調査し記載するための道具として地図が必要でした。

ヨーロッパ人が海外の領土を占領するための不可欠な要素と地図はなりました。ヨーロッパ人に新世界は従属させられ、新世界の地図ができました。あたらしい帝国は支配する領土の地図をえがき、権利を主張しました。

そして世界地図ができあがりました。

そのご世界地図は精密化がすすみ、また地図の世界でも専門分化がおこってきて、現代では、さまざまな主題図がつくられるようになりました。地質図・気候図・天気図・路線図、そのた多数の主題図が作製されています。

今日は、人工衛星による観測によるマッピング、コンピューター・マッピング、地理情報システムの時代になり、地図の歴史もまったくあたらしい段階にはいりました。


本書の特色は、古今東西の地図を大量にあつめて図鑑にしたところにあります。それぞれの言語による解説は若干わかりにくい面もありますが、さまざまな地図をたくさん見ることに大きな意義があります。

私たち人類は地図をつくりながら世界あるいは地球の認識を拡大し、意識の空間(広がり)を大きくしてきました。本書でその歴史をふりかえってみると、わたしたちは今日、グローバル化・高度情報化への歴史的な大転換期に生きていることがよくわかります。


▼ 引用文献
ジョン=レニー=ショート著『世界の地図の歴史図鑑 岩に刻まれた地図からデジタルマップまで』柊風舎、2010年11月15日
ビジュアル版 世界の地図の歴史図鑑―岩に刻まれた地図からデジタルマップまで


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