直立二足歩行と言語の発生に注目すると進化論的に人類をとらえなおすことができます。

F.A.ハイエク・今西錦司著『自然・人類・文明』(NHK出版)の第 II 章では、人類が、自然あるいは動物からどのように分かれて変わってきたのかという問題を論じています。

最初に直立二足歩行ありきで、それにくらべると言語はひじょうにおそくならんと出てこないんです。(今西錦司)

人類の祖先と類人猿の祖先とを区別する決め手は直立二足歩行があるかどうかです。直立二足歩行が根源的にあって、これにより大脳が発達し手も器用になりました。

そして言語が発生しました。直立二足歩行が人類のなかの一個人から発生してひろがったのではないのとおなじように、言語も、どこに住んでいる人類にも人類進化のある時期に自然発生したのです。これは言語学者などがとなえる、一カ所で言語は発生して、それが伝播によって世界中にひろがったという単源説あるいは単系説とはちがいます。

言語だけはほかの動物には絶対にみとめられない現象です。逆にいうと言語をえてからはじめて人間が人間らしいもののかんがえ方をするようになったのであって、言語がない時代には合理的なもののかんがえ方はできませんでした。

言語が発生する以前はその場の状況を直観で判断していました。しかし言語の発生によってロジックをはじめてコントロールするようになりました。そして文明が生じてきました。


進化の一番の証拠になるのは化石です。これ以外に進化を直接証明するものはありません。化石を年代順に並べてみると順繰りにある方向にむかって変わっていることがわかります。

およそ30万年から70万年くらい前にピテカントロプス・エレクタスとよばれるものが生きていました。これは、ホモ・エレクタスと今ではよばれるようになっていて、我々ホモ・サピエンスの直系の先祖であることが人類学者のあいだでみとめられています。エレクタスは絶滅しないでサピエンスになったのです。

化石を証拠にしているかぎりは、猿人から今日のホモ・サピエンスまである方向にむかって順次かわっています。自然淘汰ではなくて変わるべくして変わってきています。西洋人は進化を因果的に説明しようとしますが、進化というものにはある程度まで種自身の自己運動があらわれているのです。


このように人類を理解するためには直立二足歩行と言語に注目することが重要です。進化論的にみるとつぎのような順序・段階がみとめられます。
  1. 四足歩行で生きていた。(直観で判断していた。)
  2. 直立二足歩行をはじめた。(直観で判断していた。)
  3. 言語が発生した。(論理をつかいはじめた。)
  4. 文明が発生した。
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