地震・火災・津波などがおこって危険を感じたら自分自身の判断ですぐに逃げなければなりません。指示をまっていてはいけません。
山村武彦著『新・人は皆「自分だけは死なない」と思っている 自分と家族を守るための心の防災袋』(宝島社)は、東日本大震災の事例をおもにつかって、集団に依存するのではなく、みずから判断して主体的に行動することが必要だとうったえています。
目 次1 東日本大震災でわかった「防災の死角」2 人間には「自分だけは大丈夫」と期待する本能がある3 地震に備えられない人々4 自分だけは逃げ切れると思っている人々5 緊急時に知っておくべきこと6 地震予知・防災常識のカラクリ7 いつでもあなたを助ける心の防災袋
2011年3月11日の東日本大震災に関して宮城県南三陸町ではつぎのことありました。
震災前、県から出されていた宮城県沖地震の被害想定では南三陸町の想定津波波高は6.9mだった。3月11日、14時50分、気象庁は「宮城県沿岸に大津波警報! 予想される津波の高さ6m」と発表(注1)。15時14分、「予想される津波の高さ10m」と変更される。しかし、南三陸町を襲った津波は最大15.5mだった。
岩手県陸前高田市ではつぎのことがありました。
「地震+津波 すぐ避難! 避難場所:市民体育館」と市が指定していた市民体育館に訓練どおり避難した人が津波でながされてしまった。
宮城県石巻市立大川小学校ではつぎのようでした(注2)。
震災前に石巻市が作成した津波ハザードマップで大川小学校は浸水しない場所として、地域の指定避難場所となっていた。
こように想定や予測、国や県の情報・指示にしたがって行動したことが仇となって多くの人命がうしなわれました。
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しかし一方で、岩手県釜石市の子供たちは生きのこりました。
津波ハザードマップでは東中学校と鵜住居小学校は浸水区域外とされていた。つまり、両校とも津波は来ないとされていた地域だった。しかし、両校の教師と児童生徒たちはこのマップをまったく信用していなかった。高台に避難してほとんど全員無事だった。
「津波避難3原則」が多くの命をすくったのです。
● 想定を信じるな過去の事例にとらわれない。地震の専門家はエラーをしている。● 最善を尽くせ指定された避難場所で安心せず、もっと安全なところを目指して全力を注ぐ。● 率先避難者たれ行政や教師や集団に依存せず、自分の命に関わることは自分で判断して自分から進んで避難せよ。
つまりみずから主体的に行動するということです。みんなが逃げないのに自分だけ逃げるのはおかしいとか、みんなが逃げないのだから大丈夫だとおもわないようにします。
日本人は、目標にむかって力を結集し協調性とバランスをもって集団で行動する傾向をそなえています。いつも集団でいるので、自分だけがほかの人とはちがう行動をとりにくく、むしろ周囲の人たちとおなじ行動をとることで何事ものりこえようとします。
しかしこの行動様式が悪い方向にむかうと、死ぬときもみんな一緒という最悪の事態になって大災害となります。
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役所や専門家のいうことを鵜呑みにしない。むしろ信じない。これは常識の大転換です。東日本大震災は非常に大きな転換をわたしたちにもたらしました。ハザードマップを見たり想定を聞かされたりして「知った気」になってしまう、「そんなことはわかっている」となるのはもっとも危険なことです。
地震にしても津波にしても過去の事例にとらわれてはいけません。最悪をつねにかんがえて行動しなければならないことを 3.11 はおしえてくれています。
つぎの大地震として東海地震が想定されていますが予知はできないし、予知をまっているとかえって危険です。突然おそってくる地震に対して対策をしておくことが必要です。
誰もが環境や状況が急激に変わるとはおもいたくないですが、満たされた環境で努力をしなくても生きられる生活がつづくと危機回避本能が退化してしまいます。「日常」から「非日常」、「平常」から「非平常」、「通常」から「異常」へと心のスイッチをきりかえる訓練をしておかなければなりません。
地震・津波・火災どんな災害でも持ち出すのは命だけです。危ないとおもったら自分の判断ですぐに逃げる。指示をまっていてはいけません。まわりが逃げなくても、専門家が大丈夫といっても。役所や地震学者や集団に依存してはいけません。
マニュアルにそったワンパターンの行動では予想外の事態には対応できないことがもはやあきらかになりました。「マニュアルをすてる勇気」が必要です。
▼ 引用文献
▼ 注1
気象庁と地震学者は情報処理のエラーをおこした。
▼ 注2
大川小学校の生徒のなかには「山に避難しよう」とさけんだ子供もいたが、教師が許可しなかったという証言もある。教師の管理下に生徒は完全にあった。「こんなところで死んでたまるか」と言った生徒もいた。