『3.11 が教えてくれた防災の本(1)地震』(かもがわ出版)は大地震がおこったとき、自分の命は自分でまもらなければならないことをおしえてくれる本です。あるいはそのことをおしえるための教材です。

子供むけに書いてありますが大人も読む必要があります。要点が簡潔にまとめられていてわかりやすいです。

もくじ
そのとき、あわてないために
 どんなふうにゆれているのか?
 どこで地震にあったか?
 いつ地震にあったか?

自分の命は自分で守る
 ひとりで自宅にいるときは、どうする?
 火災が発生したら?
 家族との連絡は?
 建物にとじこめられたら?

地震情報を知ろう
 緊急地震速報をきいたらどうするか?
 テレビの地震情報で、何がわかる?
 どこに避難したらよいのか?


本書の冒頭では「避難の3原則」についてのべています。

避難の3原則
 (1)想定にとらわれるな!
 (2)最善をつくせ!
 (3)率先避難者になれ!

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「(1)想定にとらわれるな!」とは、役所がつくった「ハザードマップを信じるな」ということです。つまり想定やハザードマップや予知はあてにならないし意味がないということです。これは、かなりおもいきったことを言ってるとおもいますが 3.11 によってあらたに形成された基本概念です。

そして、生きのこるためにはどんな状況下でも自分自身でかんがえて「最善をつくせ!」とのべ、「率先避難者になれ!」と提言しています。

この概念を補強するために、多数の津波を経験した三陸地方につたわる「つなみてんでんこ」について解説しています。

地震にともなう大津波がきたときに「家族を助けに行こうとして命を落とす」ケースが多いです。つまり家族の絆がかえって被害を大きくしてしまいます。津波がきたら、親も子どももおたがいのことは心配せず、真っ先ににげようという教訓です。

「つなみてんでんこ」は、家族の誰もが自己責任で自力でにげることを前提にしています。このような家族への信頼、みんなが自力でにげているはずだと信じられる前提があってこそ「つなみてんでんこ」がなりたつのです。

こうして「自分の命は自分で守る」という結論に達します。

「自分の命は自分で守る」。ここでは個人の自立や自己責任が要求されます。おたがいに依存しあい個人では行動しにくい傾向のある日本人にとっては何ともきびしい話です。しかし、「つなみてんでんこ」(自分の命は自分で守る)と子供たちにもおしえなければなりません。

またつぎのこともおぼえておくとよいでしょう。
  • 地震のゆれを感じたら出口を確保する。
  • 火災が発生したら煙をすわないようにする。
  • 家族との連絡は、災害用伝言ダイヤル 171 にダイヤルする(携帯がつながらないとき)。

本書は、写真が豊富でレイアウトもわかりやすいため防災の教材としてとても有用です。


▼ 引用文献
片田敏孝監修『3.11が教えてくれた防災の本(1)地震』 かもがわ出版、2011年12月12日
3.11が教えてくれた防災の本〈1〉地震