『地球 図説アースサイエンス』(誠文堂新光社)は、産業技術総合研究所の地質標本館(注)の展示物を材料にした地球科学の入門書です。やや専門的ですが多数の写真と図表がでていてわかりやすいです。
目 次第1部 地球の歴史となりたち第1章 地球の誕生と進化第2章 岩石と鉱物第3章 生物の進化を化石にたどる第4章 地質と地形第2部 地球と人間のかかわり第1章 生活と地下資源・水資源第2章 自然の恵みと災害付 録 地質標本館について
第1部・第1章では「地球の誕生と進化」について概観しています。この章では「プレートテクトニクス」に注目するとよいでしょう。プレートテクトニクスとはとはつぎのとおりです。
固体地球の表層部は厚さ100km程度のリソスフェアとよばれる剛体の層になっています。それは一様ではなく十数枚の部分にわかれていて、それらを「プレート」とよびます。プレートは、その下にあるアセノスフェアとよばれる柔らかい層の上を移動しており、各プレートの境界において地震や火山活動、地質構造の形成などのさまざまな地質現象がおこります。このような概念を「プレートテクトニクス」といいます。
つまり、固体地球をおおっている何枚もの「プレート」が相互に運動して、それらの境界でさまざまな変動現象がおこるということです。この地球科学の基本仮説をおぼえておくと地震や火山噴火、それらにともなう自然災害などを理解しやすくなります。
第2章・第3章では岩石・鉱物・化石について解説しています。岩石・鉱物・化石は地球を構成する要素であり、これらの分析的研究は地球の物質循環の物語を読みとくために役立ちます。
岩石・鉱物・化石は書物でいうと「言葉」(単語)に相当します。言葉がわかると物語が読めるように、岩石・鉱物・化石について知ることにより地球の物語が解読できるようになります。言葉(単語)がわからなければ物語を読みとくことができません。「地球は百万巻の書籍に勝る興奮に満ちた探索の対象である」とのことです。
第4章では「地質と地形」についてのべています。地形は地質構造の反映ですので地形を見ると地質構造がある程度わかります。
そして、この地形と地質構造がつぎの第2部「地球と人間とのかかわり」を理解するための橋渡しの役割をはたします。地形と地質構造につい理解しておくと、地球の資源や恵み、あるいは自然災害についての認識を容易にします。
第2部「地球と人間とのかかわり」では地下資源(鉱物資源・燃料資源)、地熱、自然災害などについてのべています。
自然災害ではいうまでもなく大地震と火山噴火が重要です。あるいは地すべり・崩壊・土石流などにも注意しなければなりません。本書の最後には、隕石・小惑星の衝突による生物の大量絶滅についてものべられています。このようなおそろしいことが過去にはおこっていたことがわかっています。人類は今後とも生きのこれるのでしょうか?
現代は、大規模自然災害・地球環境問題・地球温暖化などが顕著になり、地球についてグローバルな認識をふかめることは万人にとって必要なことになってきました。地球科学は科学者や地学少年だけのものではもはやありません。認識をふかめ今からそなえておかなければなりません。
まとめ
- 地球科学の基本仮説であるプレートテクトニクスについておぼえておく。
- 地球の「物語」の「言葉」(単語)である鉱物・岩石・化石について理解する。
- 地形を橋渡しにして地球と人間とのかかわりを理解する。
- グローバルな認識をふかめて自然災害や環境変動に今からそなえる。
▼ 注
▼ 引用文献
地質標本館編『地球 図説アースサイエンス』誠文堂新光社、2006年8月24日
地球 図説アースサイエンス▼ 関連記事
Google Earth で地域の全体像をみる
グローバルにみて局所にはいる -『ビジュアル世界大地図』-
宇宙から地球をとらえなおす - 宇宙ミュージアム TeNQ -
地球の中から地球を見る - 国立科学博物館「シアター36○」-
地球ディスプレイ "Geo-Cosmos" で地球の全体像をつかむ - 日本科学未来館 -
地球儀を発想の出発点としてつかう