「モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」(国立西洋美術館)(注)を先日みました。

風景にそそがれたモネの「眼」の軌跡を、絵画空間の構成という観点から、他の作家の作品との比較しながらたどります。国内有数のモネ・コレクションをほこる国立西洋美術館とポーラ美術館の共同企画展です。

わたしはいつものように、館内をゆっくりあるきながら、まず、展示されているすべての作品を一気にみてしまいます。

そして次に、気に入った一枚の絵の前に行き、数分をかけてその絵を今度はじっくりとみつめます。そしてイメージトレーニングに入ります。今回は、クロード・モネ『セーヌ河の日没、冬』(1980年 ポーラ美術館蔵)を選択しました。

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目の前にひろがるその風景の全体をすっぽり心の中にいれたあと、夕日と夕焼け、それらがつくりだす陰影 、河・水・岸・対岸・木々、雲がつくりだす模様など、各要素の形と大きさをひとつひとつ丁寧にみていきます。

次に、今度は目を閉じて、今みた風景と各要素をありありとおもいだしてみます。自分自身の心の中で、モネの風景をイメージし、再現しとらえなおしてみるのです。

そして目を閉じたまま、今度は絵の世界の中へ入りこんでしまいます。わたしは、セーヌ河の河岸を自由にあるきまわり、そして空にまいあがります。上空からみると、みえなかったところも今度は自由に想像してみることができます。

東西南北からセーヌ河がうかびあがります。対岸の街並はどこまでもひろがっています。夕日はしだいにしずんでいき、夕焼け色のうつくしい世界がひろがります。その後、色彩感ゆたかな空間だけがのこり要素はなくなってしまいました。

そして、ふたたび美術館にもどってきます。

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このようなイメージトレーニングはとてもたのしい体験です。

対象の中に入りこみ、その世界を立体的にみて体験することにより、風景は、より鮮明に感動をともなってみえるようになります。 視野のひろがりのなかのそれぞれの場所でそれぞれの要素を記憶することもできます。

こうして、この日の美術展での体験は、一生に一度の、かけがえのない思い出となります。この日この場所をわすれることはもうありません。

このようなイメージトレーニングは、眼力の訓練でありますが、記憶法や能力開発の訓練にもなっています。


注:
「国立西洋美術館×ポーラ美術館 モネ、風景をみる眼―19世紀フランス風景画の革新」
会期:2013年12月7日(土)~2014年3月9日(日)


▼ 参考文献:高橋明也監修『モネと画家たちの旅 -フランス風景画紀行-』西村書店、2010年1月15日

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