ステレオグラムとステレオ写真による立体視の実験をすると、目はセンサー、脳はプロセッサーであり、わたしたち人間は情報処理をする存在であることに気がつくことができます。
立体視ができる仕組みについて脳科学者はつぎのように説明しています(注1)。
わたしたちは、片目で見るだけでは空間あるいは対象の奥行きを認知することはできない。しかし両目で見ると奥行きを認知することができ、対象を3D(三次元)で見ることができる。左目と右目とは、直接に情報をやりとりするルートをもっていない。したがって奥行きあるいは3Dの知覚は情報が伝達された先の脳で生じていることになる。
左右の目に光がまず入り、左右それぞれからの目から独立に情報が脳に伝達され、そこで両眼の視差が検出され、情報が処理されて立体的に見えるというわけです(注2、3)。
脳科学では、このような情報伝達と情報処理はニューロン(神経細胞)がになっていると説明しています。3D知覚の神経メカニズムに関する研究はこの数年の間に大きくすすんだそうです。
わたしたちは世界を目で見ているとおもっていましたが実際にはちがいました。脳科学者の言葉をかりれば「脳で見ていた」のです。2つの目は光をうけるセンサーであり、脳は情報を処理するプロセッサーです。2つの目から独立に光情報はインプットされ、それらが処理されてはじめて一本の3Dとして見えるのです。わたしたちは情報処理の結果としてわたしたちの3D世界を知覚していたのです(図、注4)。
図 情報処理の結果として3D世界が知覚される
情報処理と問題解決を実践するという立場からは脳という物質にとらわれる必要はありませんが(脳科学に深いりする必要はありませんが)、わたしたち人間が情報処理をする存在である(情報処理システムである)ということに気がつくためのひとつのきっかけとして最新の脳科学の研究成果にふれることは有意義なことだとおもいます。
▼ 注1:引用文献
藤田一郎著『脳がつくる3D世界 立体視のなぞとしくみ』(Dojin選書)化学同人、2015年2月20日
脳がつくる3D世界:立体視のなぞとしくみ (DOJIN選書)
脳がつくる3D世界:立体視のなぞとしくみ (DOJIN選書)
▼ 注2:平行法(パラレル法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。
ステレオグラムをつかって立体視をする - 平行法(3)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 平行法(4)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 平行法(5)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 平行法(6)-
▼ 注3:交差法(クロス法)をつかった立体視のやり方は下記サイトをご覧ください。
ステレオグラムをつかって立体視をする - 交差法(2)-
ステレオグラムをつかって立体視をする - 交差法(3)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 交差法(4)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 交差法(5)-
ステレオ写真をつかって立体視をする - 交差法(6)-
▼ 注4
わたしたちが見ている3D世界は情報処理によってつくりだされているといってもよいです。
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