『山で元気に! 田部井淳子の登山入門』は、高尾山から富士山までの山歩きを通して、登山の初心者が、ステップアップ方式で登山の能力を高めていくためのガイドブックです。
目 次
- 山へ出かけてみよう! 東京・高尾山
- 登山の準備をしよう! 用具選びと山行計画
- ゆっくり登山のススメ 箱根・金時山
- 険しい山に登ってみよう! 上越国境・谷川岳
- 高山に挑戦! 中央アルプス・木曽駒ヶ岳(前編)
- 山小屋に泊まろう! 中央アルプス・木曽駒ヶ岳(後編)
- いざ、北アルプスへ 燕岳(前編)
- 長い下りにご用心! 燕岳(後編)
- 日本一の山・富士山に挑む! (前編)
- 日本一の山・富士山に挑む! (後編)
目指す山にどうやったら登れるか、どんなステップアップが必要かを考え、一段一段登っていきます。この段階も登山の一環であり、ここにも楽しみはあります。
サブタイトルが「高尾山から富士山まで」となっているように、本書は「ステップアップの山歩き」を解説しています。つまり、だらだらとつづく長い長い上り坂をひたすらのぼっていくというやり方ではなくて、大きな「階段」をのぼっていきながら能力を高めていくような方式です。
ひとつの段階がおわたら、つぎはやや高い段階へ移行します。その段階がおわったら、そのつぎのさらにやや高い段階にいきます。たとえるならば、小学校を卒業してから中学校へいく、中学校を卒業してから高等学校へいくということであり、小学校を卒業していないのに中学校へはいきません。
ひとつの段階は初歩的であっても完結させ、確実に「卒業」していかなければなりません。ひとつの段階をおわらせればつぎの段階にすみやかに移行できます。
そのような観点からは、まずは、かなり低い山でよいので確実に登頂できる山を選択し、1回の登頂を達成する達成体験をえるようにします。それがすなわちひとつの段階を「卒業」することになります。
何らかの理由でもし登頂できなかったとしたら、日をあらためて再挑戦するか、あるいはもっと低い山に目標を変えて着実に登頂するようにします。
そしてつぎの段階にいくときには、自分の実力(能力の現在の限界)よりもわずかに高いところをねらってみることが、自分の能力を向上させていくことになります(自分の実力よりもかなり高いところをいきなりねらってはいけません)。
▼ 追記:田部井淳子さんの名言
「1回の登山で3度楽しめる」:山歩きの楽しみは計画段階から始まります。ガイドブックを読んだり、地図を広げたりして情報を得ていきます。そして登山計画を実行するのはやりがいがあり、おもしろいことです。また無事に下りてきたら、写真の整理をしたり、歩いた道を地図でたどったり、記録を書いたりすると、1回の登山で3度楽しめるわけです。
「自分自身を見つめる場」:山には生き方をかんがえる材料がたくさんあります。腹が立つことがあっても、目の前の雄大な風景を眺め深呼吸するだけで、わだかまりも溶け、心が広くなってくるのです。植物や動物たちの生きる様を見て、朝日や夕日を眺めて自然の摂理を感じ、自分自身のことを考えるようになります。こんな時間はとても貴重だと思います。
▼ 引用文献
日本放送協会編『山で元気に! 田部井淳子の登山入門』(NHK趣味悠々)NHK出版、2009年8月1日
山で元気に!田部井淳子の登山入門 (NHK趣味悠々)
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