取材法は情報処理の方法のひとつであり、現場を認識するために役立つ方法です。ある課題をめぐって大局をみたあとに取材法をつかって局所をつかむと、課題に関する本質にアプローチできます。
人がおこなう情報処理の観点から取材法とらえなおすと、情報収集はインプット、記録することはアウトプットにあたります。
図1 取材法は情報処理の方法のひとつである
■ 問題意識をもって情報処理をすすめる
取材をはじめるにあたって問題意識をあらかじめ鮮明にしておくことはとても重要なことです。
そして取材のかたよりをふせぐためには、関連分野ごとに汎用性のあるキーワードを記憶しておくとよいです。それぞれの分野ごとにそういったものがすでにできているとおもいます。自分の専門外の事柄については、最小限おぼえることによって最大限につかえる骨格となる知識を身につけておきます。
■ 泥くさく現場にくいこむ
取材活動をすすめるにあたっては、どこをどうほっつきあるけばよいか、どのように取材ネットをうてばよいかが問題になります。そのための原則として「探検の5原則」があります。
(1)360度の視角から(2)飛び石伝いに(3)ハプニングを逸せず(4)何だか気にかかることを(5)定性的にとらえよ
取材先に行ったらいきなり取材をしようとするのではなく、現地あるいは現場をブラブラとまずはぶらついてみます。
取材では、課題をめぐり泥くさくくいこみ、個別的に些細な事実を多角的にあつめていくのがよいです。いいかえると概論的理解にはしらないということです。聞き取りをこなう場合には相手に自由にかたってもらうことが一番大切です。
現地のニーズ調査をおこなう場合は、定性的な通常の取材活動をおこなってから、そのあとで必要に応じて質問紙法(アンケート調査)を実施するようにします。
■ その時その場をとらえる
観察したり聞き取ったり体験したことはその時その場でかならずメモをとるようにします。その時その場の記録の基本は「点メモ」とします。点メモとはごく簡単なメモであり、たった一字でも単語でも点々たる書き連ねでもよいです。記号化しても略号をつかってもよいです。
個体や個人を識別し、物事に名前をつけ記録することは観察をするどくする第一歩です。
また取材法は、取材のために特別に時間をとらなくても、毎日の生活や仕事のなかで実践することができます。
■ ブログをつかってアウトプットする
取材の結果を本格的にアウトプットするためにはブログあるいはフェイスブックを利用するとよいです。これによりデータ(情報)の永年保存ができ、またメッセージを他人につたえたり、情報の共有ができるようになります。
ブログをつかって記録していくとデータバンクが自動的に形成されてとても便利です。
データバンクのなかの記事を活用するために、得点主義にたった「多段ピックアップ」法をつかうと価値の高いデータ(情報)を迅速にひろいだすことができます。
■ 問題解決の第2段階目で実践する
取材法は情報処理の方法のひとつであり、これは問題解決の第2段階目でつかうとよいです。
問題解決では、まず第1に課題に関する全体像をつかんで、そのつぎに(第2段階目で)局所に切りこんでいきます。全体あるいは大局を見ないで、いきなり局所に入りこむと迷路にはまりこむ結果となります。まず大局をつかみ、つぎに局所をおさえてこそ問題解決はすすむのであり、そうすることによって課題をめぐる本質にもせまることができます。
図2 問題解決の3段階
▼ 参考文献
川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』中央公論社、1986年11月20日
KJ法―渾沌をして語らしめる
▼ 関連記事
情報収集をし、記録する - 取材法(1)-
最小限おぼえることによって最大限につかえる骨格となる知識をあらかじめ身につけておく - 取材法(2)-
取材のまえに問題意識を鮮明にしておく - 取材法(3)-
「探検の5原則」にしたがって取材をすすめる - 取材法(5)-
取材活動をしてからそのあとで質問紙法による調査をする - 取材法(6)-
汎用性のあるキーワードをおぼえておく - 取材法(7)-
取材では、泥くさく個別からくいこむ - 取材法(8)-
聞き取り調査では相手に自由にかたってもらう - 取材法(9)-
個体識別をし、名前とともに記録する - 取材法(10)-
その時その場で点メモをつける - 取材法(11)-
点メモをもとにしてまとめの記録をつくる - 取材法(12)-
毎日の生活や仕事の場で取材する - 取材法(13)-
ブログは自動的にデータバンクになる - 取材法(15)-
得点主義にたって記事をピックアップする - 取材法(16)-
取材法は、問題解決の第2段階目でつかう - 取材法(17)-
取材法をつかって現場をとらえる - 取材法のまとめ -