物体に反射する反響をよく聞くようにするとその空間の全体状況が認識しやすくなります。

目の不自由な人は物体に反射する音を聞いて、その物体と自分との距離や自分のいる空間を認知しているそうです。つまり、物体そのものは見えなくても反響をとらえれば物体の空間配置や空間の状況を認識することができるということです。

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たとえばコンサートホールで音楽を聞いてみると、楽器から直接発せられる音以外にホールの天井・壁・床などに反射する反響があり、これがゆたかな響きを音楽にくわえることに成功しています。

ホールによって反響はさまざまであり、東京文化会館とサントリーホールと東京芸術劇場とオーチャードホールとでは響きはあきらかにことなります。それぞれの響きがそれぞれのホールの特色あるいは個性をうみだしています。

あるいはオーディオで音楽を聞くときに、録音されている反響に耳をかたむけることによって、どのような部屋あるいはホールで録音したのかを想像することができます。

非常にひろいホールでの録音ではとおくの壁に反射した反響がきこえます。せまいスタジオ録音の場合はすぐちかくに壁があることがわかります。響きが録音空間をあらわしていることはオーディオファンはよく知っていて、反響を聞いただけでどこのコンサートホールをつかって録音したかをいいあてる人もいます。


このように、見えても見えなくても反響をしっかり感じとることは空間の状況を認知するためにとても役立ちます。直接音だけにとらわれているとその場の全体状況はわかりません。対象物だけを集中的に見ているとその周辺や背景が見えなくなるのとおなじことです。

直接的なことだけでなく、その周辺にひろがる響きをとらえることは物事の背景や本質を知ることにも通じるとおもいます。


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