観察したり聞き取ったり体験したことはその時その場でかならずメモをとるようにします。
その時その場でとった記録の新鮮さこそデータの生命です。あとでおもいだして書くと鮮度ががたおちになります。取材期間がながいほどこのことが重要になってきます。
その時その場の記録の基本は「点メモ」とします。点メモとはごく簡単なメモであり、たった一字でも単語でも点々たる書き連ねでもよいです。記号化しても略号をつかってもよいです。
何かを見たり聞いたり体験したら、そのひとまとまり(ひとかたまり)をボール(玉)のようにイメージし、その要点をメモするようにします。情報や体験をうまく区切ってひとまとまりの単位をつくるのがポイントです。
図1 情報のひとまとまり(1個の玉)に対して
1点の点メモをつける(玉を上からみた図)
点メモとは情報の本体ではなく、情報の本体(体験の玉)にはりつけられた見出しあるいはラベルであることに注目してください(図2)。
図2 点メモは、情報の本体(体験の玉)の見出し
あるいはラベル(表面構造)である(玉を横からみた断面図)
あるいはラベル(表面構造)である(玉を横からみた断面図)
このような技術をもちいると、あとで、点メモを見ただけでその時の体験(情報の本体)を瞬時におもいおこすことができます。
点メモの利点はつぎのとおりです。
- ハッと印象づけられたその時その場でパッと書ける。
- あるきながらでも電車の中でも机のないところでもかける。
- 記録をしつつも対象から目をはなさないでいられる。
- 対象にいっそう注意がむけられる。
- 観察眼がするどくなる。
- 相手のいわんとする意味に耳をかたむけられる。
- 相手の話の腰をおることがない。
- 突然うかんだアイデアもメモできる。
点メモはつぎの順で練習するとよいです。ハッと気がついたときにすぐ点メモする。これが修業の根本です。
- 自分のおもったことを点メモしてみる。
- テレビや DVD を見ながら点メモする。
- 会議などで他人の発言を点メモする。
- 見知らぬ人をたずねて面接をしながら点メモする。
- 多忙な応接や活動のなかで点メモする。
点メモをつけたら、あとで時間をとって清書をし、まとめの記録(恒久的な記録)をつくります。記録は、その時その場の記録と恒久的な記録の二段階でおこなうことになります(注)。
▼ 参考文献
川喜田二郎著『KJ法 渾沌をして語らしめる』中央公論社、1986年11月20日
KJ法―渾沌をして語らしめる
▼ 注
点メモにしろ恒久的な記録にしろ、情報処理の観点からはいずれもアプトプットであることに留意してください。それに対して、情報のひとかたまり(体験の玉)をイメージするのはプロセシングにあたります。
図3 体験の玉をイメージするのはプロセシング、
点メモをつけるのはアウトプット
点メモをつけるのはアウトプット
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