木村玲欧著『歴史災害を防災教育に生かす - 1945三河地震 -』は、過去の地震災害を知ってそこから教訓をまなび、くりかえされる自然災害に対応するための心構えや方法を身につけるための解説書です。

第2次世界大戦末期、1945年(昭和20年)1月13日未明に愛知県東部の三河地方でマグニチュード 6.8 の大地震が発生しました。これが「三河地震」です。震源の深さは約 10 km、内陸の浅い活断層に発生した地震でした。これに先立つ37日前、1944年12月7日には昭和の「東南海地震」が発生していて、三河地震は、この地震により誘発された「誘発地震」とみなすこともできるといわれています。

三河地震は、震度7の揺れで2306人もの死者をだしながら、戦時報道管制があったためにほとんど報道されませんでした。

本書ではこの三河地震について、数多くの被災者にインタビューをして被災体験を記録しながら災害の全体像をあきらかにしています。また、地域や学校にそれをどのようにつたえていけばよいか、未来の防災へのいかし方について論じています。

目 次
第1章 三河地震を知る
 1 戦争末期に発生した「隠された地震」
 2 地震の概要
 3 被害の概要
 4 前震避難
 5 本震後の救助救出活動
 6 戦時報道管制下での報道
 7 避難生活
 8 住宅再建
 9 産業への影響

第2章 被災体験を知る
 1 被災体験による「わがこと意識」と
 「具体的に何をすべきかのイメージ」の醸成
 2 被災体験を収集する
 3 被災体験を知る

第3章 被災者の体験を生かす
 1 なぜ「わがこと意識」が必要か
 2 地域の歴史災害の被災体験の使い方
 3 教材を作成する
 4 プログラムを作成する
 5 小学校での実践を通した教育効果測定
 6 その後の展開

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本書の主要な部分は被災体験の非常に貴重な記録になっています。わたしたちはこれらを読むことによって地震災害に対する「わがこと意識」を高めることができます。「わがこと意識」とは、「自分たちに身近なこととして、自分たちに引き付けて考えること」です。

「天災は忘れたころに来る」という寺田寅彦の警句があります。これは、過去の教訓をわすれたときに災害がおこるといういましめです。

歴史災害と被災体験を本書を通して知ることで「わがこと意識」をみずからそだて、教訓をわすれないようにしなければなりません。そのためのすぐれた教材として各方面で本書が役立ちます。


▼ 引用文献
木村玲欧著『歴史災害を防災教育に生かす - 1945三河地震 -』(シリーズ繰り返す自然災害を知る・防ぐ 第7巻)古今書院、2013年3月10日
歴史災害を防災教育に生かす―1945三河地震 (シリーズ繰り返す自然災害を知る・防ぐ)