『アップルのデザイン戦略』は、iPhone をはじめとするアップル製品を分解するなどしてアップルのデザイン面での挑戦を分析しています。デザインの力を信じてそこに投資するアップルのものづくりの姿勢がわかります。

本書は、雑誌『日経デザイン』の過去の記事をもとに加筆・修正して再編集した本です。

目 次
第1章 分解
 iPhone 5 恐ろしく洗練されたが、挑戦はない
 iPod touch「一見普通」に隠された恐るべき金属加工 
 iPad mini、iPodtouch 問われる設計者のデザインセンス
 iPhone 5c「樹脂らしさ」を消す工夫と努力
 iPhone 5s 洗練に次ぐ洗練を重ねたデザイン
 MacPro 繊細さは工芸品の域

第2章 箱
 アップルが見せる「シャープな角」への執念
 1箱600円。「豆腐型」パッケージの革命
 Column 箱に込めた思いは昔から同じ

第3章 対決
 VS. ソニーほか iPhone は、もはやファッションアイテム
 VS. マイクロソフト Surface RT 前編 周辺機器はアップルを超えたか
 VS. マイクロソフト Surface RT 後編 見習いたい「技術を生かすセンス」
 VS. サムスン電子 “模倣”の代償は売上げの2割

第4章 未来
 ワイヤレス充電はアップルストアで生きる
 圧力センサー搭載デバイスで広がるジェスチャー操作の可能性
 次世代樹脂製 iPhone は光をまとう?
 ウエアラブル端末向け素材はレーザーカットで作る
 腕時計型端末の特許から分かった iPhone 後のデザイン
 アップルが持つ夢の技術「金属ガラス」とは何か
 iWatch で変わるアップルの素材。次はセラミックスか?

第5章 識者が見るアップル
 インタビュー1 ブランド作りの多くをアップルから学んだ
 インタビュー2 アップルの思想は、ジョブズ後さらに先鋭化した

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丸みをおびた形で統一された部品、色によって加工方法がことなるロゴ、高い精度でつくられた筐体など、工芸品の域に達した繊細な技術をみせてくれます。iPhone などのアップル製品の中身を写真でみることができ興味ぶかいです。

また iPhone などをいれる箱(パッケージ)も分解してしらべています。ずいぶん立派な箱にいれて売っているとは以前からおもっていましたが、アップルがここまでこだわりをもって箱もつくっているとは知りませんでした。

アップルは従来のいわゆるメーカーとはちがうことがよくわかります。日本のメーカーともちがいます。本書は、

我々がやるべきことは、テクノロジーとリベラルアーツの交差点に経ち、そこからモノを作っていくことだ

というアップルの思想を確認することができる一冊です。モノづくりには思想が反映されています。
 
そしてアップルはモノづくりにとどまらず、ハードとソフトとインターネットをくみあわせた総合的なシステムを構築し、そこからあたらしいライフスタイルを創出しようとしています。

システムとはやや抽象的ですがこのようなモノを通して具体的に知ることができます。モノをみたらその背後にあるシステム全体を想像することが重要でしょう(図)。
150708 モノとシステム
図 モノをみてシステム全体を想像する



▼ 引用文献
『アップルのデザイン戦略 カリスマなき後も「愛される理由」』日経BP社、2014年5月19日
アップルのデザイン戦略

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