自分のすすみたい分野や領域に関する記憶量を増やすことはとても重要なことです。

情報処理をすすめるために必要な方法のひとつに記憶法があり、わたしは「SRS記憶法」(注)の訓練をつづけています。

今回は、この記憶法でおしえている「記憶の慣性の法則」について強調したいとおもいます。

これは、「記憶は慣性質量をもち、記憶量(記憶のウエイト)が大きい方向に人生がすすんでいく」という法則です。

つまり記憶量が大きい方向に道がひらけ、記憶のウエイトが人生の方向を決めるというわけです。ここで問題にしているのは記憶の量であって質ではないという点に注意してください。

この法則をつかうならば、ある分野や領域にすすみたいとおもったら、その分野・領域に関する記憶の量を徹底的に増やせばよいということになります。そのとき、その分野の記憶の量を増やすのであって質を高めるのではないということに留意しなければなません。質を高めるのはあとまわしにします。

過去をふりかえってみて自分の記憶量の多い分野で道がひらけてきたとおもいあたる人も多いとおもいます。しかしこれはむしろ前向きの話です。法則は、人生のためにつかっていくべきものです。

このような観点からも記憶法の実践は重要だとおもいます。


▼ 注:参考文献
栗田昌裕著『絶対忘れない! 記憶力超速アップ術』(日文新書)日本文芸社、2010年5月28日

栗田博士著『栗田博士のSRS記憶法 ― 潜在能力をぐんぐんひきだす』ダイヤモンド社、1993年3月

▼ 追記
自分が希望する方向でどうしても道がひらけず、別の方向にすすんでしまうという事例があります。本当はA分野にすすみたいのに、どうしてもC分野にすすんでしまう。C分野に関する依頼や仕事ばかりがなぜか自分にきてしまうという人がいます。その人の心の倉庫を点検してみると、A分野に関する記憶量は非常に少なく、C分野に関する記憶量が圧倒的に多いという事実があります。心ならずもその人は、これまでの経歴のためかC分野に関する体験倉庫のウエイトが大きくなってしまっているということです。

記憶量(情報のウエイト)が少ない方向には道はひらけないのでから、その人は、記憶法をつかってA分野の記憶量を徹底的に増やし、希望の方向におのずと道がひらけるようにしなければなりません。「記憶の慣性の法則」によれば、自分の記憶量の多い分野・方向でおのずと道はひらけるのですから。

ある分野の記憶量を増やすためには、たとえばその分野の本をまずは100冊よんでみることが推奨できます。どの分野を選択すればよいか。それは、自分がもっともすきな分野、本当に興味のある分野以外にはありえません。今からでもおそくはありません。