金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(注)は、地震がおこるメカニズムとそのとらえかたについてわかりやすく解説しています。地震は、断層面がずれうごくことによりおこるのであり、地震を面的にとらえることにより被災地の空間的なひろがりも理解できるようになります。

地震は、地下の割れ目がずれ動き、食い違いを起こす現象です。割れ目といっても線ではなく、広がりをもった「面」で、断層とよばれます。

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断層の概念図(注)

断層の種類などこまかいことは別にして、上図をみれれば ずれうごくのは面であることがわかります。地震の報道をみていると震源についての発表がすぐにありますが、それにくわえて、断層面あるいは震源域に注目することが重要です。

震源とは、断層のずれうごきがはじまった最初の地点であり、そこから揺れがはじまったということです。実際の揺れは断層面を中心にして広域的におこるのですから、地震は、震源よりもむしろ震源域として面的にとらえた方が理解がすすみます

2015年4月におこったネパール大地震では、震源からとおい首都・カトマンドゥであれだけ大きな被害がどうしてでたのかという疑問をもつ人が多いですが、実際にずれた断層面は首都の地下にまでひろがっていたのです。このことがイメージできないと、震源地(断層のずれがはじまった地点)では大きな災害になり、そこからはなれるほど災害は小さくなるはずだという誤解が生じてしまいます。

このように震源(点)だけに注目していると被災地の全体状況はわかりません。被災地の救援活動や被災地でボランティア活動をする場合には、このような地震のメカニズムがイメージできているとよいです。

また日本列島の周辺や地下では、断層がずれうごきそうな面がいたるところに存在しています。このような面が立体的・構造的にひろがっているというイメージができれば、大地震はどこでもおこりうることがよくわかります。点から面へ、さらに立体へとイメージをふくらませてみるとよいです。



▼ 注:引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書) 


▼ 追記「マグニチュードと震度はちがう」
よく混同されるのにマグニチュードと震度があります。

マグニチュードは地震の大きさそのものをあらわすのに対し、震度は各地点での揺れの強さをあらわします。したがって1回の地震においてマグニチュードは1つの値にきまりますが、震度は地域によってさまざまであるわけです。巨大地震であっても震源域からはなれれば震度は小さくなります。被災地の被災の程度を理解するためには震度に注目しなければなりません。

なお現在のマグニチュードは、地震波のエネルギーを計算し、それをもとにした「モーメントマグニチュード」がつかわれているそうです。「モーメントマグニチュード」は「エネルギーマグニチュード」とよぶべきであると金森博雄さんはのべています。


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